ネットで「野島伸司ドラマ」が支持されるワケ 見どころは「佐々木希の濡れ場」だけではない

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もともとこの作品は、野島氏が温めていた企画だったといいます。地上波も視野に入れていたそうですが、なぜHuluでドラマ化されることになったのでしょうか。

「今の地上波ではコンプライアンス的にも性依存症を扱うことは厳しい状況です。視聴率のうえでも民放を取り巻く環境では実現することが難しいと思います。ネット配信ドラマは、地上波では見ることができない作品を作ることが役割にありますから、日テレグループの制作会社アックスオンからこの企画が上がったとき、作るべきだと即決しました」(毛利氏)

20代女子も『高校教師』をHuluで視聴

『高校教師』や『人間・失格』(いずれもTBS)など1990年代に野島氏と多くのヒット作を一緒に作ってきた、アックスオン所属の松原浩プロデューサーが手掛けていますから、野島ブランドの引き出し方を知っている制作陣によるドラマであることも興味深いところです。

40~50代の野島作品ファン必見の作品であることは間違いないのですが、20代女性にも人気を得ているそうです。5話ぐらいまで劇的な展開は見せず、ゆっくりとしたペースで進み、今どきのダンスやグルメといった演出なども一切ありません。懐かしさを感じる昭和的な作風とも言えるのですが、意外にも若い世代にも刺さっています。

「企画から『高校教師』や『聖者の行進』『未成年』が好きだった世代の男女に向けて作っています。宣伝についても、当初は野島世代に向けて集中させるプランでしたが、それが一変したのはHulu内で野島先生の過去作品が20代女性にも視聴されていることがわかったからです。これは発見でした。出演者に佐々木希さんがいたことにより、支持を集めるF1層(20~34歳の女性)をターゲットに宣伝を打ったほうが効果的なのではと戦略を変えました。まずは若い女性に視聴してもらい、そこから幅広い層に広げていくことで成功する方法は、これまで地上波のドラマで立証されています」(毛利氏)

幅広い世代で共有できるドラマが少なくなってしまっている今、話のきっかけを作るうってつけの作品です。「愛を語るうえで、一番の障害は何かと考えたときに、理解し難くハードルの高いセックス依存症にした」という野島氏の言葉を解説できるのは、経験を積み重ねている野島世代のみがなせる業です。リリースからワンテンポ遅れても、『雨が降ると君は優しい』語りを野島世代がリードできるでしょう。Huluで全話配信中です。これから見始めても決して遅くはありません。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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