名大・岐阜大「統合」で動き出した再編の歯車 中部から始動、いずれ国公私立を含む構想も
2017年3月末までに7の国立大学が申請、うち東北大学、東京大学、京都大学が昨年6月末付で、指定国立大学法人に「指定」された。しかし、残る東京工業大学や一橋大学、名古屋大学、大阪大学は、「指定候補」とされ、新たな提案が出され条件が整った場合に指定することになっていた。
その後、東京工業大学と名古屋大学が3月20日付で追加指定されたが、名古屋大学の指定の決め手になったのが、大学間の壁を取り払ってシェアド・ガバナンス(共同運営)を目指す、「マルチ・キャンパスシステム構想」だった。
「参加大学が自律性を尊重しながら、拡大によるスケールメリットを享受し、強みに応じた拠点形成や教育研究機能強化を実現して、世界屈指の国立大学機構を形成していく」(名古屋大学)としている。
リクルート進学総研の小林浩所長は、「単なる統合だと縮小のイメージがあるが、指定国立大学という世界で戦える大学を目指す中、その準備として、中部の大学を束ねた機構構想を描いている。カリフォルニア大学が、バークレー校やサンディエゴ校など複数の学校で構成しているが、それに近いイメージを持っているのではないか」と語る。
1つの法人が複数大学を運営する
その構想の中で、運営統合の手法として有力視されているのが、「アンブレラ方式」だ。1つの国立大学法人が複数大学を運営する方式で、株式会社でいえば、持ち株会社(法人)が複数の事業会社(大学)を持つようなイメージになる。
統合のスキームは地域間や専門大学など同じ機能を持った大学同士での統合が想定されている。私立大学では1つの学校法人が複数の大学を持つケースは多い。
今後の議論次第だが、アンブレラ方式で進むなら、名古屋大学と岐阜大学の名称はそのままで、運営する法人のみを統合することになる。ただ、国立大学の法制度では、1法人1大学が基本のため、制度改正が必要になる。
実は国立大学のアンブレラ方式は、数年前から計画として挙がっている。6年前の2012年に、文科省が「大学改革実行プラン」を打ち出したが、その中ですでに記載されていた。
大学改革実行プランでは、グローバル人材育成や、多面的で総合的な評価を軸にした入試制度の転換、各国立大学の役割を見直すミッション再定義、学長のリーダーシップを強化するガバナンス改革などが盛り込まれている。今、進められているさまざまな大学改革は、そこで掲げられているメニューがほとんどで、その多くが実現されてきた。
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