ゆとろぎ 片倉もとこ著
書名のゆとろぎという言葉はイスラーム研究で著名な著者の造語で、「ゆとり」+「くつろぎ」から「りくつ」を引いたものだそうである。利益至上主義とは対極にある、ゆったりと暮らすライフスタイルがイスラームの世界から説かれている。アラビア語のラーハがゆとろぎに該当するとのことだが、イスラームの世界では仕事の後のご褒美としてラーハがあるのではなく、日常生活そのもの、死さえもラーハなのだという。旅、学び、瞑想、知人他人を問わぬ親睦と交流、お茶と菓子で楽しむ会話、あらゆる場面で時間はゆったりと温かく流れていく。
競争や成果やコストからは一線を画した世界だが、日本でもかつてそうした精神は多少は存在していた。そして今、家庭、コミュニティ、社会が壊れていく中で、こんな生き方にも目を向けてみたい。ゆとろぎっぽい生活が送れれば当人以外にも恩恵が及ぶだろう。装丁から本文まで著者の思いが伝わってくる。 (純)
岩波書店 1680円
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