確かに彼からすれば、あなたの母上との同居は、緊張や窮屈など、いろいろ神経を使うことでしょう。しかし元他人同士がお互いが住みやすいよう工夫・努力し、智恵も思いやりも働かせて諸事情も共に支え合うのが結婚です。これが難しい性格や相性もありますが、最初からそれに恩を着せて経済的な負担をせず、挙句の果ては借金まで背負わせるなど、彼の頭の構造を疑います。
長谷川町子さんには、マスオさんがあれ程までフネさんや波平さんと仲良くなれるまでの努力や忍耐も書いて頂きたかったものですね。ところでよーみ様は母上との同居を、そこまで弱みに考えるべきではありません。
「妻の親も自分の親と同じ」
私が親しくしている敬子さんは、4人の兄弟夫婦が近くに住むのに、実母を引き取って同居しています。実母は超ぜいたくで美食家でわがままな浪費家なので、堅実家の兄弟たちが匙を投げていたからです。敬子さんの夫は義母にも平気で意見をし、勝ち気な義母とよくケンカしていましたが、家族ですから当然です。彼はお花見も温泉も海外旅行も、必ず義母を同行しました。
彼の考えはこうです。「妻の親も自分の親と同じ。親一人面倒見られないようでは男でない。訪れる人がいない家は栄えないというが、わが家はお義母さんの友だちまで出入りする家となった(いつも賑やかでした)。遠くに住む自分の親は、兄嫁が大事にしてくれているので、親孝行する喜びをくれているのはこのお義母さんだ。妻の男兄弟たちにもむしろ感謝している」。
私はこのマスオさんを知るにつけ、敬愛心が膨らんでいきました。器が大きく魅力的で、周囲に幸福を振りまいてそのリターンを受け取っているような人徳厚く、友人たちが毎日のように集う明るい家庭の主です。
単に一つ屋根で暮らすだけでは本当の意味では同居ではないというお手本のような、マスオさんも真っ青になりそうな人でした。母親同様勝ち気な専業主婦の敬子さんもいつも堂々としていました。その堂々ぶりを一つ紹介します。彼女は44歳で病で一族の誰よりも先に逝くのですが、夫への遺言の一つが「私がこんなに早く逝くのも、あの強情な私の母親をこれからもあなたが世話するのも、あなたの運命と思って、よろしくね」でした。
爪の垢でも煎じて飲んで頂きたい、ちょっと真似のできない「婿殿」ですが、ここまででなくともそれに近いサザエさん家族は珍しくありません。まして同居を恩に着せ、自分のでたらめさの口実にするなど、プライドがないのかと問いたい人です。
それに乗ったあなたも改心するべきです。母上が粗末にされているということは、あなた自身が粗末に扱われているのです。母上を大切に思うご自分自身に、もっと胸を張ってください。しかも彼は、あなたの実母が同居していなくとも、他に無責任を正当化する理由を見つけたはずです。
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