本来なら、EUの売上高課税は牽制にとどめ、恒久的施設の定義を見直すことで、ネット企業と他形態の企業の間の課税上の不公平是正に注力したほうが建設的だろう。支店や工場はなく、巨大倉庫を保有していて、相当数の従業員が勤務していても、製品の保管・引き渡しのみしか行わないなら、その国の市場を席巻するほど、製品を大量に引き渡していたとしても、法人税は課されない。これが不公平の一因だ。
恒久的施設とは物理的な施設だけではない。非居住者のため、その事業で契約を結ぶ権限のある者(代理人という)も、恒久的施設となる。巨大ネット企業に限らず、ある企業がある外国に代理人を置いて、代理人がその企業の名において製品の販売契約を締結すると、企業がその国に代理人PEを有することになって、法人税が課される。
ただ、このルールにも、課税を逃れる方法がある。それは代理人PEの要件に該当しない、販売委託契約(コミッショネア契約)を締結する方法だ。ある国の受託者と販売委託契約を締結し、受託者の名において、企業(委託者)の製品の販売契約を結ぶと、代理人PEの要件に該当しない。そのためこの企業は、その国で代理人PEを有しないことになって、課税を逃れることができる。
日本は法改正で条件を厳しくしたが…
ちなみに日本政府は、これら恒久的施設の定義の見直しについて、今通常国会で法人税法の改正案を提出、3月28日に可決成立し、4月1日から施行されることとなった。森友問題で大揺れの通常国会だが、年度末までに法案は可決成立した。
これで、倉庫など保管・展示・引き渡しなどを行う場所でも、その活動が事業の遂行にあたり、準備的または補助的な性格のものでない場合、恒久的施設に該当し課税されることとなった。また、代理人PEに該当する範囲を広げ、委託者の資産の所有権移転などを委託する場合でも、代理人PEとなって、課税されることとなった。
まさにデジタル課税の問題は、恒久的施設の定義見直しを通じて、ネット企業と他形態の企業との間の課税上の不公平を、どう是正できるかにかかっている。
もっとも、こうした国内法の改正は、外国企業には直ちに適用されない場合がある。それはわが国と外国との間で結ばれた租税条約の規定が、国内法より優先するからだ。特に米国との間では、上記のような恒久的施設の定義を認めていない日米租税条約があるため、今回の法改正が日本における米国籍の企業の事業に対し、直ちには適用されない。
新たなデジタル課税か、既存の税制の大幅見直しか。巨大化するネット企業の存在に、世界の財政当局も頭を悩ませている。
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