「デジタル課税」が巨大ネット企業を襲う日

各国がアマゾンやグーグルに翻弄されている

BEPS包摂的枠組会合の参加国は、当初の46カ国(G20とOECD加盟国)から、新興国や発展途上国・地域を含めた113カ国・地域に拡大した(2018年3月現在)。国際協調の取り組みに関しては、中間報告を2018年に、最終報告を2020年に取りまとめることとなった。前掲の中間報告はもともと予定されていたものだったのだ。

だが、その中間報告では、BEPSに対して新たな国際ルールの方向性について意見の隔たりが大きく、各国の合意が見いだせなかった。

OECDの中間報告に対して、米国のムニューシン財務長官は直ちに、IT分野の巨大企業を対象とした課税に反対を表明し、デジタル課税について独自案を検討しているEUを牽制。ムニューシン長官は「デジタル企業のみを対象にする提案はどこの国からの提案であっても断固反対する」との声明を出した。「新たに余分な税負担を課すことは、経済成長を妨げ、最終的に労働者や消費者の損害となる」と強調したのである。

確かに、余分な税負担を課せば、経済成長を妨げる。ただ、同じビジネスをしていながら、従来型のビジネスモデルの企業が各国で課される法人税を納めているのに対し、国際的な巨大ネット企業だと、どこで利益を稼いでいるかを特定するのが難しいから、課税を逃れてしまう。こうなると税制面で不公平である。

PEなくして課税なし

なぜ、国際的な巨大ネット企業は(合法的に)課税を逃れられるのかと言えば、国際課税の原則として、支店や工場など恒久的施設(Permanent Establishment、PE)がなければ法人税を課税しない、というルールがあるからだ。

この「恒久的施設がなければ課税なし」という国際課税ルールの下では、支店や工場がなく、倉庫があるとしても、商品の保管・引き渡しだけを行う倉庫は恒久的施設とならないことになっている。だから、倉庫で商品の保管・引き渡しのみを行う国で、その企業に法人税は課されないのだ。

というのも、あらゆる物理的な施設が恒久的施設となるわけではない。税法上の恒久的施設とは、事業を行う一定の場所を意味し、商品の保管・展示・引き渡しや、購入のみを行う場所等は該当しない、とされている。

現に、ネット通販のような巨大ネット企業には、支店や工場はないが倉庫はある国で、顧客に商品を引き渡しても、法人税を(合法的に)納めていない企業がある。代金の受け渡しは、倉庫を通さず別の国にある営業拠点との間でネット上で行われ、利益はその営業拠点のある国で計上されている。そうした拠点がある国は、しばしば低税率国である。

そうした経緯から、通常の法人課税の代替として、冒頭のEUでの「デジタル課税」、つまり売上高に対して一定の率で課税する、という案が出てきたのである。

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