女性活躍は「最低賃金引き上げ」で実現可能だ 「1300円」まで高めれば状況は劇的に変わる

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一方日本は、内閣府の2011年度のデータによると、国家公務員の女性比率は全体で18%、高官となるとたったの3%にすぎません。この比率を、欧米並みに上げていく必要があります。多くの国会議員が元官僚であることを考えると、少なすぎる女性国会議員の育成にもつながるでしょう。

結婚を優遇する措置を全廃せよ

経営者が気持ちを入れ替える必要がある一方で、女性自身の意識改革も不可欠です。日本ではいまだに、結婚後は仕事を辞めて、家庭に入り、あわよくば旦那さんの稼ぎだけで暮らしていきたいと考えている女性が少なくないという調査結果が多くあります。

仕事をするにしても、それほど活躍したくないという意識もあるようです。たとえばキャリアインデックス社が2017年に実施した「有職者に向けた仕事に関する調査」では、管理職になりたくない人の割合は20代男性で51.7%30代男性で48.7%だったのに対し、20代女性は83.1%30代女性は84.2%でした。

女性も男性と同等の教育投資を受けている以上、男性と同様に自分の能力を最大限まで発揮して稼ぐことで、社会保障制度維持に貢献してもらわなければなりません。

さらに、女性の活躍を促す意味で、国の政策も大きく変えるべき時を迎えています。具体的には、日本では第三号被保険者、遺族年金、配偶者控除、医療費の負担の軽減など、いまだに結婚することに対する優遇措置が残っています。

これらは明らかに女性活躍の妨げになっています。政策を変えて、女性に働く動機を与える必要もあります。さきほど、最低賃金を1300円まで引き上げるべきだと言いましたが、この政策と「150万円の壁」は完全に矛盾します。

社会がここまで変化していると、結婚を優遇する政策自体を変える必要があります。そもそも経済学の観点で見ると、先進国にとって、国民が結婚することによってもたらされるメリットは子どもをつくってくれることであり、既婚のカップルが生まれることではありません。機械化と社会インフラの発展によって家事の負担が大幅に軽減されており、働く男性を家で支える必要性は昔と比べて大幅に薄れてきています。

昔の日本では、ほとんどの人が結婚していましたし、何らかの障害がある家庭を除けば、子どももたくさんつくっていました。昔の日本では離婚率も低かったので、子どもを直接的に優遇しなくても、結婚することを優遇すれば、間接的に子どもを優遇することになっていたのです。

ところが、日本では結婚しない人がどんどん増え続けています。せっかく結婚しても離婚してしまったり、子どもをつくらない夫婦も増加の一途です。さらに子どもの数も1家庭に1人か2人で、昔のように子どもがたくさんいる大家族はいまや大変貴重です。

今の社会保障制度は、現役世代が高齢者を支えることが根本にあり、子どもの数が大きく減ることを前提にしていません。しかし日本では、高齢者を支え続けるのに十分な子どもをつくってこなかったという現実があります。今から子どもをたくさんつくっても計算上間に合いませんので、同一労働化を進めることによって対応するしかないのです。これはある意味、自業自得と言えるでしょう。

このように、社会自体が変化し、昔のように国として既婚の夫婦を優遇する理由が薄れているので、優遇制度も実態に合わせて変えていかなくてはいけないのです。

すでに欧州では、子どもを産むことを優遇する一方、社会保障負担は男女、未既婚を問わずに皆平等に負担する制度に移行しています。

日本でも、結婚することを優遇している今の措置は全廃するべきです。配偶者控除、第三号被保険、遺族年金、すべて廃止し、女性の社会保障の負担を男性と同様にするべきです。

女性も自分の社会保障負担分は自分で稼いで、自分で払う。代わりに、たとえば子どもが12歳になるまでは徹底的に優遇するなど、子どもをつくることが「お得」だと思われる制度を検討すべきです。もちろん、子どもを育てた後は復帰して、男性同様に働く動機を与えることも求められます。

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