女性活躍は「最低賃金引き上げ」で実現可能だ 「1300円」まで高めれば状況は劇的に変わる

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大胆提言!日本企業は今の半分に減るべきだ」にも書きましたが、今後数十年にわたり、日本では生産年齢人口が激減します。その規模は、2060年までに3264万人という莫大な数で、現在世界第10位の経済規模を誇るカナダの総人口や、世界第5位を誇る英国の就労者を上回ります

一方で、高齢者は減りません。減らない高齢者を支えるためには、GDPの規模を維持しなくてはいけませんが、それは日本人男性が働くだけでは絶対に不可能です。このことは、計算機をちょっとたたけばすぐにわかります。

では、人口減少による需要減少をどうやって埋めるか。選択肢は、移民を大量に受け入れるか、生産性を向上させて対応するために女性に同一労働をしてもらうかのどちらかです。

まず移民ですが、一部のマスコミや経済人は、「人口減少問題に対応するために、海外同様に日本も移民を迎えるべき」と主張しています。しかし、日本の人口減少規模はドイツやイタリア、スペインなどとはケタが違いすぎます。

『新・生産性立国論』でも詳しく書いたとおり、今の経済システムのままで、GDPを維持して社会保障制度を守るために必要な数の移民を受け入れると、人口の5人に2人が外国人になります。そんな大量の移民を受け入れる社会的なコンセンサスは、海外でも難しく、日本ではなおさら非現実的です。となると、女性の活躍を進めるしか選択肢はないのです。

数千万人の外国人男性を迎えて、日本という国を根底から変えてしまいかねない大規模な移民政策をとるか。女性活躍を進めるため、男性の傲慢と女性の甘えをなくし、同一労働化を進める制度を作るか。今、日本が突きつけられているのは、この究極の選択なのです。

企業の意識改革が当然必要

ご存じのとおり、日本の企業社会は男性中心です。このことが、女性の活躍の必要性が長年お念仏のように唱えられているにもかかわらず一向に進まない一因になっています。

生産性向上という目標がなく、非常にあいまいな評価基準を持って経営されている多くの日本企業にとっては、女性活用という選択肢は目にも入らないでしょう。男性社会の中で生産性向上というプレッシャーもなければ、異性であり、産休などもあり、男性と違う常識や価値観を持っている女性を重用するインセンティブはなかなか生まれません。

前回の記事にも書きましたように、これまでの経緯を見ていると経営者が自発的に変わってくれることは期待薄なので、社会と政府からの圧力が必要になるでしょう。

その圧力を受けて、今後、企業の経営者たちが「GDPを維持しないと、日本は本当にまずいことになる。 しかし大量の移民を受け入れるのは現実的ではない。人数勝負ができなくなるので、一人当たりの付加価値を高めなくてはいけない。それでも、人口減少規模からすると男性だけではとても無理だから、残されているのは女性だ」ということに気がついてくれれば、初めて本格的な女性の活躍に舵を切る重要性が理解され、生産性向上のために動き出すことが予想されます。

要するに、いくら女性活躍を唱えても、どんなに女性活躍のための政策を政府が用意しても、経営者に女性活躍を促進する動機がなければすべてが無駄なのです。生産性向上というミッションを明記して初めて、経営者が女性活用を進める動機が生まれるのです。

そのためにも、まずは最低賃金を上げる必要があります。最低賃金で働いている人は女性が多いと考えられますので、その賃金を上げることで、経営者が女性の生産性を高める動機が生まれます。「『低すぎる最低賃金』が日本の諸悪の根源だ」でも書きましたとおり、当面は1300円程度を目指すべきでしょう。

さらに政府自身も変わらなくてはなりません。英国政府によると、英国の国家公務員のうち54%は女性で、高官で見ても女性比率は39%にのぼります。米国の連邦国家公務員の女性比率は、2016年に43.3%でした。

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