要注意！職場における｢パワハラの典型｣6つ 指導のつもりはNG､懲戒処分や訴訟リスクも

職場におけるパワハラとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為をいいます。

一般にパワハラというと、上司から部下へのいじめ・嫌がらせを想像される方が多いと思いますが、同僚間や先輩・後輩間、部下から上司に対して行われるものもあります。職場内での優位性には、職務上の地位に限らず、人間関係や専門知識、経験などのさまざまな優位性が含まれている点に留意する必要があります。

また、パワハラ問題が難しいと言われるゆえんは、たとえば上司の指導とパワハラとの線引きにあいまいなところがあり、判定の基準が明確でない点が挙げられます。受け手によっても、感じ方が異なりますし、一つひとつの事例を限定列挙していくことも現実的ではありません。そこで、基本的なパワハラの類型を確認して理解を深めましょう。

パワハラの6類型とは

「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」で取りまとめられた提言では、職場のパワハラについて、裁判例や個別労働関係紛争処理事案に基づき、次の6類型を典型例として整理しました。ただし、これらはパワハラに当たりうる行為のすべてについて網羅するものではありません。

（1）身体的な攻撃

たとえば、上司に報告書を提出したところ、出来が悪いことに腹を立てて物を投げつけられ負傷した、といったケースが挙げられます。直接体を蹴ったり、たたいたり、従業員に危害を加える暴行・傷害は、身体的攻撃型のパワハラに該当します。

（2）精神的な攻撃

同僚などがいる前で、上司から「クビだ！ おまえなんて辞めてしまえ」など、従業員としての地位を脅かす言葉や「馬鹿だ」「無能な奴」などの暴言を毎日のように浴びせられることなどが該当します。また、教育訓練という名目で、懲罰的にたとえば何かの文章を書き写すことを長時間行うようなことなども、精神的な攻撃に当たります。侮辱や名誉棄損に当たる暴言は、業務の指示の中で言われたとしても業務遂行に必要な言葉とは通常考えられません。そうしたことをされている職場では、他の従業員もおびえてしまい、職場環境が悪化してしまいます。

（3）人間関係からの切り離し

仕事のやり方をめぐって上司と口論して以降、必要な資料が配布されない、会議の日時を教えてもらえない、話しかけても無視される状態が続いている、意味もなく一人だけ別室に席を離される……など、職場上の有意な立場を使って職場全体で仲間外れや無視など個人を疎外する行為は、パワハラに該当します。

（4）過大な要求

帰り際に、「明日までにこの資料を作成してほしい」と上司から声をかけられた経験は、誰しも一度や二度はあるかもしれません。これをもってパワハラとは言えませんが、一晩ではとても処理しきれない業務量を毎日のように繰り返し命じられる……となると、話は別です。

業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、また仕事の妨害があった場合は、過大な要求型のパワハラに当たることがあります。単に仕事量が多いというだけではパワハラとは言えませんが、能力や経験を超える無理な指示で他の従業員よりも著しく多い業務量を課したりすることは、このタイプの典型例といえます。

（5）過小な要求

過大な要求とは一転して、業務上の合理性もなく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないことが過小な要求型のパワハラです。たとえば、経理部員として採用されたのに、書類にシュレッダーをかける業務のみを命じたり、一日中清掃をさせたり、あるいは仕事を与えずに放置したりすることなどが挙げられます。

小さな職場では、一人何役もやらなければならないこともありますので、過小な業務が一部混じっていたことをもって判断はできません。その行為が行われた状況や継続的であるかどうかなど幅広い視点から見ていく必要があります。

（6）個の侵害

個のプライバシーを侵害するパワハラもあります。たとえば、上司が管理の目的ではなく、個人的な興味から私生活や休日の予定を聞いてきたり、スマートフォンやロッカー、机などの私物をのぞき見たりすることなどが該当します。年次有給休暇を申請した際に「誰とどこへ行くのか、宿泊先はどこか」などを聞いたり、休日に上司の私的なコンサートチケットを取るために部下を並ばせたりすることなども挙げられます。