アップルは新iPadで教育市場を奪い返せるか 「クラウド主義」グーグルの真逆を行く戦略
こうした新しいタイプの教材、授業へと一足飛びに行くことはできないかもしれないが、日本市場に目を向けると文部科学省が2020年にデジタル教科書の導入を目指しており、教育現場改革は待ったなしの状況だ。
今回の発表が日本における教科書のデジタル化の動きにどこまで影響するかは未知数だが、教育市場を攻略することで、その先に広がる市場を獲得できる可能性がある。
たとえば文書作成ツールとして業界標準となっているマイクロソフトのOfficeとその文書フォーマットだが、アップルの提供するソリューションではiWorkが文書作成の出発点だ。クリエイティビティに関する授業でも、使われるのはアップル製アプリとなる。
さらに、学校で学んだアプリ使いこなしノウハウのみならず、そこで作られた成果物を200Gバイトに増量したiCloudに保存しているならば、最終的に社会人になった際に、その成果物を引き継ぎたいと考える生徒・学生も少なくないだろう。
そうした間接的な利点、そしてアップルが大きく負け越している数少ない領域ということも考慮すれば、アップルにとって教育市場がいかに重要かが推し量れる。
グーグルとの決定的な違いとは?
グーグルが提供する教育ソリューションとのもっとも大きな違いを端的に言うと「両者の立ち位置によって生まれている“向いている方向の違い”」だ。
端末価格を引き下げ、複数生徒が1つの端末を共有し、サードパーティ製(ロジクール製)ではあるが、低価格なキーボードカバー付きの衝撃吸収ケースやスタイラスペンを用意するなどの対策で初期導入費用を抑えられるようになった。
一方、前述したようにクラウドを中心にしたグーグルの手法と、アプリ同士が通信を行うことで教材や配布物、進捗などの管理を行うアップルの手法はプライバシーに対する姿勢という意味で対照的だ。これは端末のハードウエアを販売するアップルと、教育現場における教師や子どもたちの動向をデータとして入手したいグーグルという、事業モデルの違いとも受け取れる。
それは、従来の教材や授業の手法をクラウドで実装しているグーグルに対して、それを各種メディア成果物の制作という得意分野で勝負したいアップルという対比で見ることもできる。そしてこれらは視点を変えると、ここ数年繰り返されてきたAndroid対iPhoneの構図にも似ている。
「宿題を出したり、遠足を案内するための案内を電子的に簡単に配布できます。生徒ごとに進捗管理や指示を出したりも、教師は一覧して見渡すことが可能です。しかし、これらの通信はプライベートな通信(校内のネットワークを通じたアプリ間の個別通信)であり、教師と生徒たちがどのようにやり取りをしたかは、アップルには一切送信されません。アップルは自社製品のユーザーが、どのような行動をするのか、そのプライバシーを完全に守ります」
あるいは、このメッセージこそが、この日のイベントでもっとも伝えたかったことなのかもしれない。
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