米銃規制、「賛成」と「反対」がせめぎ合う現場 デモに参加した人たちの生の声とは?

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全米ライフル協会(NRA)を批判するサインが目立つ(筆者撮影)

ブッシュいわく、無差別射殺に頻繁に使われ、殺傷力の高いAR15をマーケットからなくすには、銃市場を死守したい全米ライフル協会(NRA)と市民の全面対決になるだろうという。

「政治家たちへのNRAの献金の額はものすごいから、簡単ではないけど、闘うしかない」と語る。

確かに、今回のデモの現場では、トランプ大統領を批判するポスターの数よりも、NRAを名指しで批判するポスターの数のほうが圧倒的に多かった。

すぐに出口を確認する習慣がついた

従姉妹が殺されてから、ブッシュは映画やコンサート、教会などへ行く際に躊躇するようになったという。出掛けた先では出口をすぐ確認し、出口のすぐ横に座るなど「もし撃たれたらどうするか」をつねに想定して行動するようになり、いつも不安な気持ちを抱えているという。

「銃による暴力は公衆衛生上、疫病のようなもの」だと主張する小児科医のリサ・ルーさん(1番右・筆者撮影)

そんなストレスが、深刻な心身の症状を引き起こすことも多いと語るのは、デモに白衣姿で参加していた小児科医のリサ・ルーだ。フレズノの大学病院に勤務している。

「特に、銃犯罪に家族が巻き込まれた経験のある子どもは、不安からひきつけを起こしたり、心身に深刻な変調が出ることがとても多い」とルーは語る。

米小児科学会は、今回の銃規制を求めるデモを支持すると公式発表し、彼女や仲間の医師たちがこのデモに参加した。フレズノ地区では銃犯罪が多く、その犠牲になる子どもたちも見てきたルーは「銃犯罪は疫病と同じで公衆衛生上の大問題だ」と言う。

米国では、メンタルヘルスに問題がある人間に銃にアクセスさせるなという議論もつねに起こるが、ルーは医師の立場から「他国でもメンタルヘルスの問題を抱える人は多数いるのに、なぜ米国だけこれだけ突出して銃犯罪の数が多いのか。そもそも銃へのアクセスが簡単すぎる。そこを規制しないと解決にならない」と語る。

「銃を持つ権利を守る」デモでは巨大なトランプの旗が(筆者撮影)

10万人以上の人々が朝からLAのダウンタウンに集まったこのデモが集結しかけた午後4時、今度はLAの連邦政府ビルの前で、「銃を持つ権利を守る」ためのデモが行われた。

星条旗が複数はためく政府ビルの前に「TRUMP」の文字が描かれた畳ほどの大きさの旗などを手に立っている男女は約20人ほど。

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