森友文書改ざん問題、佐川氏証人喚問の論点 野党は佐川氏に何を聞くべきか

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国有地売買について森友学園と直接折衝していた近畿財務局で、佐川氏は1998年7月から翌年7月まで理財部長を務めている。この時、佐川氏は3月7日に自殺した職員と面識はあったのか。またこの件は「昭恵案件」と呼ばれており、本省の決裁を必要とするものだったが、この件について直接担当者に指示することがあったのか。

なお自殺した職員は「自分の常識が壊され、心と体がおかしくなった。汚い仕事をやらされた」とのメモを残していたとの報道があったが、近畿財務局がそのような職場環境にあったことについて、佐川氏はどのように感じたのか。

前任者・迫田氏の関与はあったのか

佐川氏の前任の理財局長であった迫田英典氏は、山口県下関市出身で、安倍首相と懇意であることは有名だ。森友学園の国有地取得交渉が行われている最中にも、何度も官邸に出入りしていた。売買契約が成立したのも、迫田氏が理財局長時代だ。

そこで迫田氏とその後任の佐川氏の間の「申し送り」の中に、「昭恵案件」が含まれていたかどうか問題となる。あるいは問題が発覚した後に、前任者から何らかの「伝達」があったのかどうか。

迫田氏は民間人だから証人喚問は困難という意見もあるが、すでに国税庁長官を退官して私人になった佐川氏が証人喚問されているため、召喚することについて区別する必要はないだろう。

籠池氏によれば森友学園問題が発覚した直後、財務省の「シマダ氏」から「10日ほど身を隠してほしい」と言われ、ホテルに隠れていたことになっている。これについて佐川氏は2017年3月15日の衆議院財政金融委員会で佐川氏自身の関与を否定したが、17日の衆議院外務委員会では「シマダ氏」が部下の嶋田賢和課長補佐であること、さらに「理財局の補佐として、森友学園と連絡し、協議することもあろうかと。いずれも事務的な連絡することはありうる」と答弁。微妙な含みを残した。

なお嶋田氏は東日本大震災を契機に2011年6月から岩手県釜石市に出向し、同じ頃に佐川氏は東日本大震災復興対策本部事務局次長を務めていたという関係がある。

以上、ざっと論点をひろってみた。27日の証人喚問は衆参あわせて4時間と非常に短いため、真相解明には至らないかもしれない。しかし一歩でも真実に近づくことこそ、次のステップに繋げる道ではないか。不正があるのなら、それを見逃してはならない。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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