病気が早く治る患者はいったい何が違うのか よい病院を見分けるためのポイントとは?

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しかし、実際には指揮者としての力がなく、オーケストラの音色が悪いままの状態、つまり、改善の余地の残る治療を漫然と続けている病院が意外と多いのが現実です。

また、病気の治療は急性期病院の指示通り進めることが基本ですが、疑問のあるときは前医に問い合わせて確認します。そして、患者さんの質問に誠実に親切に答えます。当然、それができない医師がいるリハビリ病院もやる気がないと判断されます。

急性期病院の医師は、患者さんが退院するときに、リハビリ病院の医師に向けて紹介状を書きます。極端に言えば、紹介状に書いてある通りに再発予防と全身状態の管理をすればなんとかなります。リハビリ治療の現場では、患者さんを日中に寝かさないだけで、後は患者さん自らの回復力で自然回復するということも多いのです。

病態に応じた全身管理ができる病院を選ぶ

急性期病院と回復期のリハビリ病院では、それぞれの役割が違うわけですから、患者さんとご家族もそのことをきちんと認識しておく必要があります。リハビリ病院というのは、文字通りリハビリを行うための病院なので、手術をしたり、がんを治療したりするような医療は行いません。

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熱が出た、軽い怪我、そういったいわゆるプライマリ・ケアと呼ばれる治療はリハビリ病院で当たり前にできるのですが、ICU(集中治療室)治療はできません。

いわゆるICU体制というのは、50人の患者さんがいる場合、看護師は最低でも50人は必要で、多くて100人ほどいるものです。一方のリハビリ病院には、ワンフロアに50人の患者さんがいる場合、夜勤の看護スタッフの数は3人から4人が現状です。

このため、リハビリ病院では集中的な全身管理や治療ができず、再び急性期病院での治療が必要となる場合もあります。

これは、「急変」と呼ばれる状態が多く、治療はもとの急性期病院に戻って行うことになります。ですから、リハビリ病院に入院した患者さんが、次から次へとすぐに急性期病院にたくさん戻るような場合は、あまり良くない病院だと言えます。全身管理をしつつ、積極的なリハビリ、チーム医療が行われている病院を選びましょう。

酒向 正春 大泉学園複合施設施設長・ねりま健育会病院院長

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さこう まさはる / Masaharu Sakoh

1961年愛媛県宇和島市生まれ。愛媛大学医学部卒。1987年脳卒中治療を専門とする脳神経外科医を経て、脳リハビリテーション医へ転向。2012年副院長・回復期リハビリテーションセンター長として世田谷記念病院を新設。2013年NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」第200回で「希望のリハビリ、ともに闘い抜く リハビリ医・酒向正春」として特集され、脳画像解析に基づく「攻めのリハビリ」が注目される。2014年著書『あきらめない力』を執筆。2015年健育会竹川病院院長補佐就任。2016年練馬区に健康医療福祉都市構想委員会/練馬プロジェクトを始動。練馬地区の地域リハビリテーション体制構築と大泉学園地域に超高齢社会に対応した街づくりモデルを実践するため、2017年4月大泉学園複合施設ねりま健育会病院新設し院長就任。

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