スシローが「回らないすし店」に乗り出すワケ 業界トップも"ついに"フードコートに初出店

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スシローコノミの店舗にはテイクアウトメニューで盛り合わせなど幅広い商品もそろえる(記者撮影)

こうした状況下でスシローは郊外以外への出店に乗り出している。2016年9月には東京・池袋に、2017年5月に東京・五反田に都心型モデルの回転ずし店舗を出店。今回のフードコート型は、都心型店舗と同様に、郊外とは異なる立地への展開を目指したものだ。

今回、フードコートに出店するにあたり、通常の回転ずしのスシローとは異なる点もある。ネタを入れる業務用冷蔵庫は、扉タイプではなく、引き出しタイプのものを導入し、ネタを載せやすくするようにした。うどんは通常よりも半分の時間でゆであがるゆで麺機を使用し、客の待ち時間を短縮することに力を入れた。

多店舗展開を視野に入れる

商品面では通常店舗で提供する「あぶりもの」の商品を扱わない。火を使うと初期投資がかさむこともあり、今回の店舗では提供しないことにした。一方で、「生サーモンアボカド」や「えびアボカド」(いずれも税抜きで1貫100円)という手間のかかる商品は、オペレーション上の観点から反対意見もある中、最終的にメニューに入れ込んだ。

福田哲也・取締役執行役員(右)とスシローコノミの髙徳理代店長(左)。髙徳店長は新卒でスシロー入社3年目。神奈川県内での店舗経験の多さと、本人の熱意で今回店長に抜擢された(記者撮影)

「立地を考えると女性のお客様も多くいらっしゃる。看板商品ということもあり、これだけは外せないということで頑張って入れた」(山本直幹・事業創造推進部長)

他方、ターミナル駅に隣接する商業施設のフードコートという好立地を考慮すると、当然賃料などは安くないはず。ただ、通常店舗で働く人員が20~30人に対し、今回のフードコート店はピーク時でも6~7人。「人件費だけではなく、店舗サイズも小さいので初期投資は大きくない。コストとのバランスをみながら、しっかりと利益が出せるモデルを構築していきたい」(山本部長)。

2号店のフードコートの出店はまだ決まっていないというが、多店舗展開を視野に入れているという。「回らない」新たなスシローの取り組みは消費者に受け入れられるだろうか。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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