「高等教育無償化」が招く最大の弊害は何か 大学独自の奨学金を充実させたほうがいい

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現時点で無償化を行えば、高校現場は混乱するだろう(写真:kikuo / PIXTA)

2017年の春から教育に関する大きなトピックとなっているのが、「高等教育無償化」の動きだ。家庭の経済力によって、「教育を受ける権利」が妨げられることを解消する目的は、誰しも是認するところではある。しかし、さまざまな立場から疑問や批判も相次いで出されていることも事実だろう。

筆者は、高校入試の際の学力が低い生徒が集まる「教育困難校」や、このような高校からの進学者が多い「教育困難大学」で教える経験を持つが、その経験からすると、現時点での高校教育無償化には反対である。現時点で無償化を行えば、「教育困難校」や「教育困難大学」の現場がさらに混乱すると思うからである。

学校独自の経済的負担軽減策

筆者は、高校生や保護者対象の進路講演でしばしば各地の高校を訪れる。先月、神奈川県のある高校を訪問した。その日は1・2年生の保護者を対象に、「進学にかかる費用」をテーマにしたものだった。

進学費用に関して話してほしいという高校からの依頼は、7〜8年程前から非常に多くなっている。入試の多様化により、今まで大学に進学しなかった学力層の進学者が多くなったことが背景にある。加えて、高校も学校間の生徒獲得競争が激しくなっているため、手厚い指導をするようになったという要因もあるだろう。

講演終了後、高校の先生から「学校側が望んでいることを話してくれた」と感謝された。昨年まではファイナンシャル・プランナーが来校して、学生支援機構のローン返済計画、家庭の収入に対する教育支出の割合など、専門家ならではの詳細な話がなされていたが、聞いている保護者が細かい数字の話についていけず、どんどん暗い表情になったそうだ。

筆者も当然、学生支援機構や国の教育ローンの制度の話もするが、生徒が頑張れば進学にかかる費用を軽減できる話を織り込んだ。これが学校側からすると良かったというのだ。

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