手塚治虫 竹内オサム著
11月に生誕80年を迎える(ちなみにミッキー・マウスと「同年」)故手塚治虫の評伝。同氏の作品は『ジャングル大帝』『リボンの騎士』『鉄腕アトム』『ブラック・ジャック』『火の鳥』などマンガ15万余ページ、アニメ多数にのぼる。特に団塊の世代は、一世を風靡した少年時代に読みふけった向きも少なくない。
著者は、手塚が60歳で他界してのちの「神格化」あるいは逆の「革新性否定」を、ともに似つかわしくない虚像化ととらえる。「妥協する天才」こそ実像だとして、その真の姿を少年時代にまでさかのぼり、細部に至るまでリアルに描く。
そして後半生を、物語作りの才能は抜群だったが、作品を生み出す苦悩は並大抵ではなく、読者から絶大な支持を受けたのは1950年代半ばまでと、鉄腕アトムのアニメ放映の時期に限られると判定する。マンガを「芸術」に昇華させようと努めた分、大衆受けする要素が少なかったのかもしれないと結論づける。
ミネルヴァ書房 2520円
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