eスポーツ大会の高額賞金が「グレー」な理由 立ちはだかる法律の「壁」をクリアできるか

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景品表示法については、ゲーム大会で使われるゲームを販売していない会社や団体が賞金を出せば回避できそうです。そもそも無料のスマホアプリのゲームで課金による優劣をつけずに対戦すれば問題がないはずです。

風俗営業法については、風俗営業法が規制する施設で大会を開かなければクリアできそうです。eスポーツ専用施設も登場しはじめていますし、高額賞金が出せるほどの人気タイトルの大会の場合、大型屋内施設を使用することになるので、ゲームセンターで大会を開くことは現実的ではありません。eスポーツと呼ばれる以前にゲームセンターが店舗ごとにゲーム大会を開いていた時代の話をもとにした解釈が広まっているのではないでしょうか。賭博罪に関しても、スポンサーが賞金を出し、参加費を無料にすればクリアできそうです。

しかしながら、こうした点についてはあまり言及せず、「日本では高額賞金が出せない」と信じられているのが現状です。

2月10~11日に幕張メッセで開催されたゲームの祭典「闘会議2018」のステージに登壇し、JeSUによるプロライセンスの発行について語るJeSU代表理事の岡村秀樹氏(写真中央)と理事の浜村弘一氏(右)(筆者撮影)

3つの法規制により高額賞金が出せない状況をクリアしようとしているのが、JeSUです。彼らは参加者にプロライセンスを与えることで、賞金を仕事による報酬とし、高額賞金の受け取りができるようにしようと考えています。

その根拠として挙げられているのが、ゴルフトーナメントです。賞金が出る大会でも、賞金や賞品の受け取りを放棄することを宣言すれば、アマチュアも大会に参加できるようになります。アマチュアが優勝した場合は、優勝賞金は次に成績のよいプロゴルファーが受け取ります。

アマチュアが高額賞金を獲得できる大会は存在する

2016年の日本女子オープンゴルフ選手権では、まだアマチュアだった畑岡奈紗選手が優勝しましたが、賞金は2位の堀琴音選手に渡りました。確かにこの例だけを見るとプロライセンスがあることで、賞金を得ることができるように思えますが、この規定は日本ゴルフ協会(JGA)のアマチュア規定に則っているだけで、景品表示法にかかわりがあるかどうかは言及されていません。

そもそも日本女子オープンゴルフ選手権を主催しているJGAはオフィシャルスポンサーにNECがおり、ほかにも多数の協賛会社が存在します。つまりゴルフと直接かかわりのない企業がスポンサーになっているので、景品表示法自体にかかわるかどうかも微妙なところです。

スポーツのカテゴリーではないですが、ほかにもアマチュアが参加し、高額賞金を獲得できる大会がいくつか存在します。

将棋の8大棋戦の中にはプロ棋士でなくても参加できる棋戦が2つあります。竜王戦と棋王戦です。竜王戦は優勝賞金が4320万円の高額賞金がかかっています。竜王戦ではゴルフとは違いアマチュアが優勝しても、賞金は問題なく得ることができます。

「闘会議2018」でパズドラ大会の成績上位者にプロライセンスがJeSUから贈られた(筆者撮影)

カードゲームの「マジック・ザ・ギャザリング」のイベントの1つ「グランプリ」は参加資格を特に設けておらず、アマチュアが参加可能です。優勝賞金は個人戦で1万ドル、チーム戦で1万5000ドル(1人あたり5000ドル)となっています。ほかにも漫才や音楽、絵画などのコンクールでアマチュアに賞金を出しているところも多々あります。

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