「支援の谷間」に落ちた被災者の深刻な生活苦 在宅被災者が復興支援から取り残されている

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「経済的な理由で食料が買えないことがあったか」との問いに対しても、36%の世帯が「よくあった」、「ときどきあった」と答えている(震災前は約25%)。

「子どもの成長の機会も制約を受けている」(田代光恵・国内事業部プログラムマネジャー)

垣間見えた現実

震災直後からの支援活動を通じて、約4000世帯の在宅被災者とつながりを持ったチーム王冠との連携により、仙台弁護士会は2015年11月から2017年11月の2年にわたり、在宅被災者563世帯を戸別訪問して、生活上の課題を聞き取り、支援につなげる活動を続けてきた(後半の1年間は石巻市の委託事業)。その過程で、国や自治体の支援策が行き届かない実態が明らかになってきた。

石巻市内で一人暮らしの70代女性もその一人だ。地震の被害でトイレや浴室も使えなくなった。修繕の資金もないため、親戚の家で使わせてもらうなど不自由な生活を続けている。

チーム王冠や弁護士の手助けにより生活保護受給につながったが、立て替え払いが必要なため、修理のための補助金受給の見通しが立たない。女性は歩くのも困難で、頼りにしてきた近隣の住人も亡くなった。

資金がないため、修理もままならない自宅で暮らす高齢男性。生活再建ははるか先だ(記者撮影)

大震災ではこれまで、家を失い、仮設住宅に入居した被災者に多くの注目が集まったが、在宅被災者も過酷な生活が続いている。

「在宅被災者の中には、情報不足から自治体が用意した支援策の存在を知らずに、いまだに利用していない人や、自治体の補助金を利用することができていない人も少なくない。その多くが高齢者や低所得者だ」

仙台弁護士会で在宅被災者世帯への訪問・支援活動を続ける山谷澄雄弁護士(災害復興支援特別委員会前委員長)は、「支援の狭間に落ちたままの被災者が少なくない」と説明する。そもそも在宅被災者が、大規模災害の支援対象として明確に位置づけられていない側面もある。

大震災から7年。埋もれた被災者に目を向けずして、復興は実現しない。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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