「支援の谷間」に落ちた被災者の深刻な生活苦 在宅被災者が復興支援から取り残されている

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石巻市は国から財政支援を受けて、住民税非課税の被災者(家屋が大規模半壊以上)の医療費自己負担の免除を特例措置として続けてきた。だが、所要額の2割に相当する市の負担継続が困難であるとして、3月末で終了させる方針だ。

その結果、約6000人の低所得の被災者が4月以降、通院や入院のたびに2割または3割の自己負担を余儀なくされる。

「お医者さんにはこのままでは両目とも見えなくなると言われた。打ち切りは死ねということだ」。佐藤さんは絶望感を吐露する。

4年前の2014年3月、宮城県による財政支援の中止をきっかけに、県内の多くの被災者が国保医療費の自己負担免除打ち切りに見舞われた。それにより佐藤さんは通院が困難になり、薬を処方してもらうこともままならなくなった。

その後、被災者からの切実な声を受け止めて、石巻市などの自治体が国の支援を基に免除を再開したが、財政難を理由に再び打ち切りが迫っている。

子育て世代の困窮も深刻

当事者が多くを語らず、支援も行き届かないため、生活に困窮する被災者の実情は知られていない。その多くは佐藤さんのような高齢者だが、子育て世帯の困窮も予想を超えて深刻だ。

国際NGO(非政府組織)団体「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」が、学用品費などの一部を支援している被災地の子育て世帯396(うち337が一人親世帯)を対象に実施したアンケート調査によれば、もともと生活苦であったところに震災が重なったことで困窮が増していることがわかった。

震災前に「赤字だった」と答えた世帯が3割弱だったのに対して、「過去1年間」では6割強に達している。

「震災で仕事がだめになり、借金が返せない」

「仕事を二つ掛け持ちしているが、もう一つ増やすつもり。子どもとのかかわりに不安がある」

アンケートでは切実な声が記録されている。

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