塩野義、インフル新薬で狙う「勝利の方程式」 年1000億円超の「ブロックバスター」目指す

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塩野義は2017年度も過去最高の営業利益1135億円を見込む。営業利益率は33%を想定し、製薬業界屈指の収益力を誇る。

その原動力は、自社創薬の抗HIV薬群の海外売り上げに応じたロイヤルティ収入だ。今期は300億円増やし、年1000億円の大台乗せがほぼ確実だ。

塩野義には、欧米市場で自前の営業部隊が薬を売りさばく力はない。その弱点をメガファーマの手を借りることで補っている。これが塩野義流「勝利の方程式」だ。抗HIV薬では英グラクソ・スミスクラインなどとの提携が奏功した。

一方で、高脂血症薬「クレストール」は、特許切れで後発薬による侵食を受け、販売が急落。今期の国内売上高は1割減となる。薬価制度の抜本改革や薬価引き下げで、来期以降は国内環境がさらに厳しくなる。

海外市場はライバルのロシュに任せる

国内テコ入れに、ゾフルーザ発売はまさに渡りに船だ。ただ、インフルエンザ薬市場は最大の日本でも推定500億円程度。塩野義の視線の先には、伸びしろの大きい海外市場がある。

欧米ではインフルエンザ薬はまだ十分に浸透していない。ただ、今年は米国でインフルエンザが流行し重症化、死亡例も増えるなど、新薬が受け入れられる素地はでき始めている。

カギを握るのは、スイスのロシュとの提携だ。日本と台湾を除く世界での開発・販売は同社が担う。医薬品世界2位でタミフルを開発した企業だけに、この市場に対する経験も豊富だ。

ロシュはなぜ敵に塩を送るのか。実は、タミフルは特許切れを迎え、今夏に日本で後発薬が初参入する。新たな収益源を確保したいロシュにも、塩野義との提携は魅力的だった。塩野義が最重要視する米国では、ロシュが今年中に承認申請をすることで両社は合意済みだ。

塩野義は勝利の方程式を再現できるか。日本発の新薬は世界攻略の出発点に立ったばかりだ。

大西 富士男 東洋経済 記者

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おおにし ふじお / Fujio Onishi

医薬品業界を担当。自動車メーカーを経て、1990年東洋経済新報社入社。『会社四季報』『週刊東洋経済』編集部、ゼネコン、自動車、保険、繊維、商社、石油エネルギーなどの業界担当を歴任。

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