平昌五輪で米朝に「勝った」文大統領の根性 「米朝会談」は幻に終わったが・・・

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イヴァンカ大統領補佐官の文大統領との晩餐会では、両国政府間の違いが明らかになった。トランプ大統領が「朝鮮半島の非核化に向けた最大限の圧力」を維持するよう呼びかける一方、文大統領は、米国に「南北対話に対する強い支持」への感謝の意を表したのである。

25日の会談後、噂によれば金朝鮮労働党委員長が米国との会談の準備ができたと表明したとされ、その時は文大統領の粘り強さが成果をもたらしたかのように見えた。だが韓国政府の声明はまた、金委員長が会談には非核化の話題が含まれるという意見に直接応えを示していないことも認めた。

平昌五輪で残ったものは・・・

だが、北朝鮮では、金氏は米国関係ではなく主に南北関係を担当している。注目すべきは、金氏が南北対話で進展を図るには、米国との接触はある程度必要である、という文大統領の主張を特に受け入れたということだ。

今回、北朝鮮代表団には昔から米国関係を扱ってきた外務省の高官が含まれていた。イヴァンカ大統領補佐官の一行にも、アリソン・フッカー国家安全保障理事会朝鮮半島担当補佐官が含まれていた。国務省の元情報アナリストであり、北朝鮮上層部と交渉を行った経験を持つ人物である。トランプ政権は北朝鮮の声明を慎重ながらも認め、このため、フッカー氏が24日の週末、密かに北朝鮮側の米国担当官と会談したのではないかとの憶測が盛んになされるようになった。

こうした接触が、今後何をもたらすかはまだわからない。少なくともこれで、北朝鮮と米国の対話を実現させたいという文政権の真摯な希望は生き続けることになる。文大統領にとって、対話の目的は、実際に非核化を見ることではなく、北朝鮮の核・ミサイルプログラムの凍結という取引である。

文大統領はこれを「最初の段階」としながらも、現実的には最終目的に据えている。この巧妙なプロセスが失敗しなければ、文大統領は金委員長との首脳会談を提案し、そのための基礎を築きたいと考えている。これに伴い、平昌オリンピックで延期された後、4月に予定されている合同軍事演習を、中止とまではいかなくてもスケールダウンする必要が出てくるかもしれない。

ただ、2つの重要な問題の答えが出ていない。トランプ大統領の最低条件は何か。そして金委員長の本当の目的は何なのか。それは、門戸を開きつつある韓国を通じて経済制裁を軽減させることなのか、それとも米国と対話を持つことなのか。ここで1つだけ明らかなのは、文大統領の決意だ。北朝鮮へ通じる道を再開しようという揺るぎない決意は、平昌オリンピックの成功によってより強固なものになったようだ。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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