北朝鮮が引き起こしかねない米中戦争の危機

ハーバード大教授が警告する「過去との相似」

グレアム・アリソン/米ハーバード大学教授。キューバ危機を分析した『決定の本質 キューバ・ミサイル危機の分析』で有名(撮影:田所 千代美)

――「トゥキディデスのわな」に陥った過去500年の実例を見ると、16のうち12で戦争が起きています。75%とは非常に高い確率と言えます。

トゥキディデスのわなが生じるのは、新興勢力が覇権勢力を脅かし、その地位を奪おうとするときである。同時に双方がシナリオどおりの動きをする。

新興勢力は自らが強くなったと感じ、独断的になる。また現状のルールが邪魔だと考えるようになる。一方の覇権勢力側は、「新興勢力は国際秩序を変える危険な存在だ」と感じる。現状の米中関係はまさに、この状態にある。

――習近平政権にそういった意図がみられると。

中国・習近平総書記による共産党大会の演説には、「わが国は今後、より強大な国になる。2050年までに世界の超大国として中心的な立場を占めるだろう」とある。

彼は非常に優秀な人物だ。国際的な指導者の中で、最も野心的で最も成功した人物だ。彼が中国政府の集団体制を受け継いで、自らが作り出した一極指導体制へと変化させたという事実は、政治的にとても興味深い。(昨年10月の)中国共産党の第19回党大会で起きたことは、21世紀における皇帝の戴冠式のようだった。

だからこそ彼はアメリカを近い将来、支配的な地位から引きずり降ろそうと、真剣にもくろんでいる。アメリカに率いられた国際秩序を、中国に率いられた「中国流」に刷新したいと考えている。

米国や日本は一帯一路に対抗できる資金も構想もない

――習政権が世界秩序刷新の策として打ち出す、一帯一路をどう評価しますか?

陸のみならず海をも通じて、アジアとヨーロッパを結ぶ壮大な構想だ。この交易路や枠組みにより何が起こるかというと、すべてが中国基準で作り上げられるということだ。

米国や日本が一帯一路に対し、どのように反応できるかはわからない。両者とも対抗できるような資金もなければ、構想もない。

――中国の台頭に対し、アメリカの反応は?

トランプ政権の国家安全保障戦略やマティス国防長官の防衛戦略を見ると、中国を明らかに敵視している。これら一連の動きは、トゥキディデスのわなが想定したとおりだといえる。そして不確実性は増している。

言うまでもなく、トランプ大統領は普通ではない。異端な大統領だ。そして国際関係について詳しくない。政府にかかわった経験もほとんどないし、今までの通説に縛られることもない。誰も彼が何をするのかがわからないため、リスクを生み出す可能性をはらんでいる。

ただし、彼の国家安全保障会議の顔ぶれはすばらしい。世界の状況をとてもよく理解している。

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