北朝鮮が引き起こしかねない米中戦争の危機 ハーバード大教授が警告する「過去との相似」

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「不確実性は増している」(撮影:田所 千代美)

――地政学といえば、ロシアの存在も欠かせません。

中国の躍進は、米国、日本などの安全を損なう。その点において、(日米は)ロシアと共通の利害関係を持っている。中国に対する均衡勢力となるよう、協力し合う方法を見いだすべきだ。

しかし、2016年の大統領選におけるロシアの干渉と米国政治の混乱が組み合わさった結果、(米国内において)ロシアは今やあらゆる点で批判の対象となっている。ロシアに対して前向きな動きをしようというのは、現在の米国では難しい。

――米中の直接対決のきっかけは何でしょうか?

現在の状況下では、双方とも第三者が起こした事故に脆弱になる。対立する一方の側が、ささいな出来事であっても反応しなければと感じてしまい、その結果、もう一方も反応せざるをえない状況へと追い込まれる。

この悪循環はやがて、誰も望まない戦争へと行き着く。

危機のきっかけは北朝鮮にとどまらない

――第三者の中で最も危険な人物が、金委員長だと。

そのとおりだ。今後、米国と韓国が軍事演習を再開する際に何かしらの合意が結ばれないかぎり、金委員長はさらなるミサイル実験を数回試みる可能性がある。トランプ大統領は「ミサイル実験をしてはいけない」と反応してしまう。とても危険な状況と言える。

危機のきっかけは北朝鮮にとどまらない。台湾や尖閣諸島も、米中戦争のきっかけになりうる。

――「米中は経済的に相互依存の関係だ。だから戦争は起きない」という意見もあります。

そういった意見については、第1次世界大戦を思い起こすことが重要だ。当時、英国とドイツは経済的な結び付きが極めて強く、現在の米中に似ていた。

当時のベストセラーをご存じだろうか。ノーマン・エンジェルの『大いなる幻想』だ。同書は「(貿易や投資により)経済的な相互依存関係が高まっているため、戦勝国は勝利によって手にするよりも多くの価値を戦争で失う。だから戦争を起こすことは不可能である」と主張した。だが現実には、第1次大戦の勃発は免れなかった。

トゥキディデスの教えによれば、第三者の行動が大きな影響を及ぼすからだ。当時を振り返れば、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子夫妻暗殺が、各国を戦争へと導いた。

――米中戦争を防ぐためには、どうすればいいのでしょうか。

私たちは、米中が対立しているという現実に目を向けたうえで、「これは危険だ。どうすれば対処できるのか」と考えるべきだ。流れに身を任せて状況をありのままに受け入れてしまえば、歴史どおりの結果が待ち受けている。

「歴史を学ぶことを拒んだ者だけが、それを繰り返すことを強いられる」。(哲学者の)ジョージ・サンタヤーナの言葉を今こそ心に留めるときだ。

『週刊東洋経済』3月3日号(2月26日発売)の特集は「日本人が知らない地政学」です。
林 哲矢 東洋経済 記者

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はやし てつや / Tetsuya Hayashi

日本経済新聞の記者を経て、ハーバード大学(ケネディスクール)で修士号。『週刊東洋経済』副編集長の後、『米国会社四季報』編集長。

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