共働き「ブラックボックス家計」が危険な理由 同居しているのに相手の年収も貯金額も「謎」

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2人はほぼ同じ年収ですので、必要貯蓄額をそれぞれ半分ずつ(約105万円)出し合い、専用の貯蓄口座に「先取り貯金」をしていくことにしました。せっかくですので、運用もしたいところです。その口座から、個人型確定拠出年金(iDeCo)への拠出金も引き落とされるようにしていくことにしました。それだけではなく、合わせてネット証券口座を開き、つみたてNISAもスタートすることにして、年間40万円ずつ、2人で80万円を貯蓄の中からネット証券の口座に移しました。これで貯める仕組みは完了です。

「年間約210万円」のパワーはすごいものです。ここからiDeCoの拠出金、2人で年55万2000円、つみたてNISAの80万円を差し引いた約75万2000円が毎年積み上がっていくことになります。年末調整で戻ってくるおカネも使わないでこの口座に入れることに決めました。この調子で行けば、子どもが大学に進学するまでに、1000万円以上は貯められそうです。

「貯めては取り崩すクセ」から脱し切れるか

確実におカネを貯めていくには、貯蓄を取り崩さないようにすることが大切です。貯められない家計の特徴は、「貯めては取り崩す」を繰り返していることです。毎月、自由に使えるおカネがいくらなのかをきちんと把握しましょう。

南條家の一括で支払っている保険料、帰省のための費用、冠婚葬祭費用、旅行などの娯楽費など「毎年必ずある支出(年間臨時支出)」を出すと、約60万円でした。現在の2人の手取り年収780万円から、年間の必要貯蓄額約210万円と年間臨時支出約60万円を差し引くと約510万円です。それを12カ月で割ると、毎月自由に使える金額が出ます。42万5000円でした。この中から住宅ローンを含んだ生活費を出し、残りが自由に使える「お小遣い」です。どう按分するかは、お2人でしっかり話し合って決めてください。生活に追われるだけではなく、楽しみや自己投資にも予算を持てることが人生の満足度を上げますし、成長にもつながります。

また、人生100年時代、これからも続く長い人生、セカンド・キャリアについて考えることも必要です。資格を取得したり、新しい知識をつけるために自己投資にもおカネを使っていきましょう。今の仕事の延長で働くとしても、スキルのアップデートや強化が必要になるでしょう。加えて人脈も必要です。75歳くらいまで仕事が続けられる状況をつくろうと思えば、ある程度の準備期間と投資が必要なのです。

いかがでしょうか。「ガラス張り家計」にすると、貯蓄のスピードは間違いなく上がります。長期的なビジョンを共有し、「おカネについての家族会議」は、できれば毎月1回、少なくとも3カ月ごとに行ってください。大げさなことではなく、食事をしながら、

・毎月の必要貯蓄額は守られているか

・想定外の支出など、困ったことはないか

・計画を変更する必要はないか

などを確認し合ってください。夫婦の円満は、「おカネの使い方」と密接です。

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岩城 みずほ ファイナンシャルプランナー・CFPⓇ

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いわき・みずほ / Mizuho Iwaki

特定非営利活動法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、お客様の利益を最大限に、中立的な立場でのコンサルティングほか、講演、執筆を行っている。
慶応義塾大学卒。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年間活動後、会社員を経てFPとして独立。著書に増補改訂版『人生にお金はいくら必要か』(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)、『やってはいけない!老後の資産運用』(ビジネス社)、『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)、『結局、老後2000万円問題ってどうなったんですか?』(サンマーク出版)ほか多数。HP

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