不動産転売ビジネスがストップ、崖っぷちに立つ新興デベロッパーたち
「あと1~2社倒れたら融資姿勢も変わる」
一方、自助努力で環境の好転を待っている企業も少なくない。
プロパストは株式公開が06年12月でほんの2年前。その前年、05年5月期までは流動化事業の売上高はゼロだった。それが上場した07年5月期には、不動産開発の売り上げ比率15%に対して流動化事業は一気に84%にまで拡大している。
ただ、「市況上昇もピークとみて棚卸し資産の圧縮を速めた」(森俊一社長)結果、前08年5月末の棚卸し資産の金額はマンション開発中心の不動産開発が67%(07年5月期49%)に対して流動化事業である資産活性化は33%(同51%)に減っており、他社よりひと足先に圧縮に動いたことを示している。ただし、前期末で棚卸し資産の評価損は計上しておらず、今第1四半期に「20億円程度計上する予定」(同社IR担当)だと言う。
また、今期の流動化事業の売り上げについては959億円を見込み、前期比5%程度伸びるとしている。森社長は「ファンド向けはないが、いい物件なら個人富裕層や事業会社向けに結構売買は成立している」と言う。が、現在の環境からすると、過大感は否めない。さらに、流動化事業から再度主力事業になったマンション開発も、今期分の契約率は「71%まで来ている」(同)が、ここから先の販売スピードがどこまで伸びるか、現在の分譲マンションの環境からすると、予断は許さない。
一方、レーサムは資産運用コンサルティング会社としてスタート。同社も棚卸し資産は04年8月期の184億円から07年8月期には756億円。さらに直近の第3四半期では1095億円まで拡大している。約10倍の膨張で他社と大差はない。ただ、同社の場合、この8月に棚卸し資産の評価損が129億円と、他社と比べて大きな特損を計上している。田中剛社長は「バブル崩壊時の最安値の水準まで評価を落としたが、こうした決断は自分が筆頭株主(08年2月末で63・3%保有)だから即断できることだ」と語気を強める。ここから先、早期での売却が難しいことを見据えた判断で、他社以上に踏み込んだ対応と言える。
サンフロンティア不動産の流動化ビジネス比率も極めて高い。同社は都心の中古ビル再生・販売で伸びてきた。棚卸し資産を見ると、06年3月期が161億円に対して、08年3月期には454億円まで急増。が、環境激変で方針を転換。バルク購入した低採算物件のほとんどを売却し、前期の営業利益は20%の減益になった。
また、棚卸し資産の評価損もやや少ないが13億円計上した。今期の営業利益については9%程度の伸長計画だが、不動産市況の低迷が長引いている中、過大感は残る。ただ、前期末の自己資本比率は、プロパストが14・6%、レーサムが36・3%に対して、サンフロンティア不動産は45・5%と比較的高く、現在のような金融情勢の中では優位にあると言える。