「日経平均2万円割れ」の懸念は消えたのか ドル安円高は1ドル=105円を超えて進むのか
S&P500指数の予想PER(当期予想利益ベース)は、ここ数年は16~18倍の範囲で推移してきた。特に上限の18倍は、2006年辺りから見ても、上限として機能してきた。ところが2016年後半以降は、18倍を超えることが恒常化し、今年1月には20倍もはるかに超えて、買われ過ぎが際立っていた。
この予想PERが、16~18倍に戻れば、買われ過ぎは解消されたことになる。上記の予想PER算出に用いた予想利益には、アナリストが連邦法人税率引き下げの利益押し上げ効果をまだ十分に織り込んでいないと推察されるため、それを補正して、S&P500指数のPERが18倍(レンジ上限)、17倍(レンジ中央値)、16倍(レンジ下限)になった場合の、NYダウの相当する水準を試算すると、それぞれ2万4155ドル、2万2813ドル、2万1471ドルとなる。
これに対して、NYダウの直近のザラ場安値が前述の2月9日(金)の2万3360ドルだった。つまりPER18倍相当の2万4155ドルを割り込んだので、買われ過ぎはいったん解消されたと解釈でき、それが底値形成であったとしてもおかしくはないと言える。
日経平均も底値「圏」を形成しつつある
では日経平均株価はどうか。最近の株価下落は、日本の経済や企業収益が悪化したわけでもなく、また日本株はPERでみて、それほど割高でもなかった。そのため、日本株の下落は、米国株に連動したものに過ぎず、米国株が反転上昇に向かえば、日本株も上昇すると予想される。
前述のNYダウの下値メド試算値を用い、NYダウと日経平均が同率変化するという前提を置けば(かなり大雑把な前提だが)、米国株PERの18倍、17倍、16倍相当の日経平均は、それぞれ2万1587円、2万0388円、1万9189円となる。日経平均の最近のザラ場安値は、2月14日(水)の2万0950円であったわけだが、これも米国株でみたPER18倍相当値を割り込んでおり、調整十分という結論でもおかしくはない。
なお、日本の経済や企業収益は悪くなく、日本株は割高でもなかった、と語ったが、日本の株価に脆弱性はあったと考えている。それは、昨年10月や今年初の株価の急上昇は、確かに実態面で企業業績が改善していたため、株価が上がること自体に違和感はなかったが、海外短期筋が日経平均先物買いで日経平均株価ばかりを吊り上げ、株価上昇の「お化粧」をしていた、という点だ。
それはNT倍率(日経平均÷TOPIX)の動きに表れていた。昨年10月や今年初の株価上昇は、NT倍率の上昇を伴っており、企業業績のよい銘柄が幅広く買われていたというよりも、海外短期筋の日経平均先物買いで、日経平均「ばかりが」吊り上げられていた、という感が強かった。先物を買っていた短期筋が手仕舞い売りを進めれば、株価が反落する、というリスクが積み上がっていたわけだ。したがって、昨年10月や今年初めの株価急騰時は、「わーい、株価が上がってうれしいな~」と舞い踊るのではなく、「こうした相場付きはおかしい、いずれ株価が大きく反落するに違いない」と警戒した方が、正しかったのである。
今回、米国発の株価下落で、短期筋の日経平均売りも進み、NT倍率も大きく反落して、昨年10月半ばの水準まで一時低下した。この点で、投機筋の手仕舞い売りも相当進んでしまったと解釈できるため、その後の日経平均が戻り歩調に復してもおかしくないだろう。
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