「日経平均2万円割れ」の懸念は消えたのか ドル安円高は1ドル=105円を超えて進むのか

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こうして日米株価はすでに底値をつけ、これからは実体経済に沿った上昇基調をたどると見込んでいるわけだが、もちろん、今回の下落で傷んだポジション(システム売買などを含む)の投げはまだあるだろうし、完全に投資家心理が改善しきったわけでもないだろう。そのため、直近の日米株価のザラ場安値を割り込む可能性はゼロではない。とは言っても、前述の分析から、仮に割り込んでも大きく深く割れるとは見込んでいない。

直近の安値を割り込むのか割り込まないのか、どちらなのか予想できないのか、と問われれば、それを見通す能力は筆者にはない。見通すことができる、と語っている専門家の話を聞いていただきたい。

いずれにせよ、日米株価ともに底打ちしたあとは、緩やかな企業収益回復に沿った、緩やかな株価上昇基調をたどりそうだ。ただし、ここで「緩やかな株価上昇」と語ったのは、予想というよりも筆者の「願望」だ。おそらく短期的には、また米国株価などが、勢いづいて上振れすることもあるのだろう。ただ、そうして株価上昇が行き過ぎれば、再度大きく調整し、その後仕切り直してまた上昇する、といった繰り返しになると見込まれる。

ドル円相場も、そろそろ円高一巡か

円相場も気になるところだ。1月初旬は日銀の債券買い入れ減額が円高材料とされ、最近では2月15日(木)の麻生太郎財務相の「特別に介入せねばならないほど、急激な円高でもない」という発言を材料視する向きもあった。ただし、それは円高の本質ではない。

かなり前から筆者のところに、米系ヘッジファンドなどから、「米ドル買い円売りのポジションを積み上げてしまったため、噂でも嘘でも間違いでも何でもいいから、円を買い戻す材料が出ないか」という問い合わせは多かった。つまり、海外勢が、本気で日銀が量的緩和を縮小すると信じているわけではなく、麻生財務相の発言を重大視したわけでもなく、最初から「円を買うことに決めていた」ため、円高材料に「使われた」といったところが真相だったろう。

最近の円高局面は、1月上旬の1ドル=113円から108円への5円幅の動きと、その後110.50円辺りに戻った後の105.50円までの5円幅の動きといった、「2回の5円幅」で、円売りポジションは相当掃除されたように推察される。そのため、米ドル安・円高もそろそろ一巡だろう。

そもそも国内株価への影響という点では、ここ数日は、円高でも輸出企業の株価が堅調だ。これは、足元の輸出増が、為替によるものではなく、世界経済の回復に伴う実需増によるものだ、という点を踏まえれば当然だが、今後も過去に比べれば、日本株は円高抵抗力を強めそうだ。

以上述べてきたような株価の底入れ上昇の流れの中で、今週の日経平均株価は、2万1500~2万2400円を予想する。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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