実は人生初?スキーにハマる中国人の実情 日本のスキー産業復活の起爆剤になるか
そんな中、スキーに関心を持ち始めた初心者の中国人親子などを対象に、彼らを日本のスキー場に呼び込もうという「スキーインバウンド」の取り組みが始まっている。行っているのは長野県の「黒姫高原スノーパーク」など各地でスキー場を運営しているマックアースだ。
同社では2017年から中国人のインバウンドに力を入れ始めていたが、黒姫では2017年末に親子ツアーを、2018年初めに子どもだけのツアーを開催。5~13歳までの子どもとその親たちが北京や上海から参加して、初めてのスキーを楽しんだ。
同社執行役員・CEO室長の王芳氏によると、参加人数は各10人。SNSで募集して、日程は3泊4日。内容は雪遊び、ソリ遊び、スノーモービル体験、スキーレッスン、そば打ち体験、温泉など盛りだくさんだったという。
参加費用は日本円で1人約8万円。新幹線代、宿泊費も込みの料金で、インストラクターもいるという。「参加者はみんな大満足でした。スノーキャット(雪上車)に乗って満天の星空を見に行くツアーでは、子どもたちが大喜び。スキーを習うのがもちろん目的なのですが、雪合戦や雪だるまを作るなど、中国ではやったことがない遊びも含め、雪に親しんでいただけたと思います」と王氏は語る。
北京から参加した親子も「北京でも雪は降りますが、多くはないので、スノーモービルやソリ遊びをすることが楽しみでしたが、何よりも感激したのはスノーモンキー!(笑) 。テレビで見たことはありましたが、まさか本当に猿が温泉に入っているとは……。スキーをしていない時間でも、すぐそばでお湯につかる猿を見られて楽しかった」と話していた。
日本旅行の「体験」のひとつに
参加した子どもの多くは、北京や上海のインターナショナルスクールに通っていて、海外旅行にも慣れている富裕層だが、これまでスキーをした経験はなかったようだ。前述したように、日本にはスキー以外にも雪がある場所でのアクティビティが豊富にあるため、初心者にとっては、スキーが目的で来日するというよりも、日本旅行の“体験”のひとつにスキーや雪遊びも加わった、といったほうがいいかもしれない。
中国人富裕層の多くは「自分の子どもには勉強だけでなく、海外にも連れていき、さまざまな経験をさせてあげたい」と思っており、中国国内ではまだあまり盛んではないスポーツやレジャーもそのひとつだ。
よく知られているように、日本のスキー場は低迷が叫ばれている。総務省のデータによると、日本のスキー人口のピークは1992年の約1860万人をピークに減少し始め、2013年には770万人まで減少した。一方、「中国スキー産業白書」によると、中国のスキー人口は2016年に約1500万人で、前年比20%増となっている。日本のピーク時とほぼ同じだが、中国の人口は日本の約10倍なので、これでもまだ多いとはいえない。
中国政府は2022年のオリンピックを見据え、スキー人口を4500万人にまで増やしたいという見通しを示しているが、まだ統一したスキー検定などもなく、インストラクターの養成も急務。さまざまな課題を抱えながら、一気に動き出している段階だ。
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