実は人生初?スキーにハマる中国人の実情 日本のスキー産業復活の起爆剤になるか

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ところが、2015年に北京冬季オリンピックの開催が決定して以降、急速に状況が変わってきた。北京郊外や河北省、東北部などに次々と新しいスキー場が建設され始めたのと同時に、経済的なゆとりができてきた富裕層の間で、にわかにスキーブームが巻き起こってきた。

スノーモービルなども人気だ(写真提供:王芳氏)

2年ほど前まで北京に駐在し、現地のスキークラブに所属、中国人のスキー仲間がいるという日本人男性が語る。

「北京から日帰りできる距離に密雲県南山のスキー場がありますし、車で3~4時間の場所に有名な河北省崇礼スキー場、万龍スキー場、オリンピック会場になる予定の雲頂スキー場などがあります。

有名スキー場には中上級のスキーヤーもいるのですが、私が見たところ、南山などは5割がまだ初心者でした。初心者用のゲレンデに行く途中のスノーエスカレーター付近では、係員が転んだスキーヤーを親切に起こしてあげたりしていました。ゲレンデ食は意外といろいろなメニューがそろっており、これからもっとスキーヤーを増やしていきたいという雰囲気でしたね」

オリンピックを前にスキー場建設というインフラ整備が一気に進むなか、あらゆるものに興味津々の富裕層たちが「未知のスポーツ・スキー」に飛びついた。これが、ブームを牽引しているようだ。

国内のスキー場だけでなく海外にも

だが、中国国内にあるスキー場は乾燥地帯にあり、ほとんどが人工雪。そのため雪質が非常に硬いという。スキー場の気温も日本よりもかなり低く「寒すぎて、滑っていてつらい」(冒頭の担当者)そうだ。それでも、富裕層のスキー経験者は国内のスキー場にかなり通っていて、前出の元駐在員の男性によると「駐車場にはBMWやベンツなどの高級車がズラリと並んでいた」という。

冒頭の担当者によると、年齢は初心者だと20代、中級以上になると30~50代の富裕層が多い傾向があるが、次第に国内だけでなく海外にもスキーに行き始めたという。行き先はスイスやカナダ、アメリカ、そして、距離的に最も近い日本だ。

日本のスキー場の雪はパウダースノーといわれる自然の粉雪で、ふかふかなのが特徴。そこで「日本には雪質がよいスキー場がたくさんあって初心者が始めやすいうえに、温泉、雪景色、日本食もプラスアルファで楽しめるために、急速に注目が集まってきた」(冒頭の担当者)というわけだ。

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