私自身、「年相応」という言葉が大嫌いなのです。変な若作りをする必要はないですが、自分らしく見せることはとても大事ですよね。結局、日本はまだ、若くてかわいいところに価値があるとされる社会で、私にとっては、それは寂しいことです。
ところが、アメリカやフランスでは少し違います。若いときはTシャツとジーンズで十分輝いているけれど、歳を重ねると内面的に輝くものが出てきて、ジュエリーやブランドが似合う美しさが身に付くと考えられているのです。
カルチャーが響く女性たちの存在
――するとターゲットとしては、かなりアッパークラスの一握り、というところなのでしょうか。
確かにメインターゲットは、自分自身で仕事をしていて収入がある女性になるでしょう。ただ、それが極端に少ない層だとは思っていません。
たとえば昨年、ダイアナ・ヴリーランドという、『Harper’s BAZAAR』の名物編集者を追ったドキュメンタリー映画が、日本で思いがけないヒットになりました。確かに一昔前から『プラダを着た悪魔』のような、ファッション関連の映画はありましたが、そういうものとは違う、有名な女優が出てくるわけでもないドキュメンタリー映画に、一定数の人が興味を持ったワケです。
正直、私もすごく驚きましたし、日本のモード誌もこぞって取り上げました。映画界も「こんなものがヒットするんだ!」と気づいた感があり、実際にこの秋から来春にかけて、ファッション関連とか、マリリン・モンローのような各時代のファッションアイコンに関する映画が目白押しなのです。
創刊号の誌面でも取り上げましたが、創刊に際しては、イベントを兼ねた試写会を企画しました。六本木ヒルズとのコラボで、読者やヒルズのカード会員を招いて、10月11~13日の3日間、毎日1本ずつ新作のファッション関連映画を上映します。そのうちの1本は、公開が来年の春なのですが、もう無理やり試写させてくださいと、話をつけまして(笑)。
異例の、「左開き・横書き」にトライ
――なるほど、表層のファッションだけでなく、その背景にある文化などに興味を抱く層が一定数、存在するのかもしれませんね。ところで、米国の本誌と日本版の中身は、どれくらい違いがあるのでしょうか。
向こうから明確に比率を規定されているわけではありません。海外版の情報を聞きつつ、編集会議で扱うか扱わないかを決めて、先ほどの映画特集のように日本独自の特集も入れ込んでいきます。
やはり米国誌は海外のものなので、日本人好みのテイストとはかなり異なる部分もあります。これは『VOGUE』も『marie claire』も同じ悩みだと思いますし、みんな少しずつ違ったアプローチで対処していると思います。
ただ今回は、せっかく創刊号なのだからと、リスクを承知でトライしてみた部分のほうが多いかもしれません。そのひとつが、雑誌の作りを左開き、横書きにしたこと。日本の女性誌で、特に長く文章を読ませるものは、みんな右開きの縦書き。かなり悩みましたが、思い切りました。
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