「宇宙ビジネス」は大きな転換点を迎えている スペースXの大型ロケット打ち上げの意義
ファルコン・ヘビーが失敗していれば、スペースXにとって大きな痛手だったかもしれないが、競合たちに希望を与えていたのは間違いない。アマゾンの設立者ジェフ・ベゾスは、自身で民間宇宙飛行の会社ブルー・オリジンと、再利用可能なニュー・グレン・ロケットの試作品 (もう1つの大発明である)を所有している。
もちろん、宇宙においては、各国政府が変わらず大きな役割を果たしている。実際、米国、ロシア、中国は、有人の機体を軌道に乗せることに関しては、独占状態だ。昨年、ドナルド・トランプ米大統領が、NASAの手で米国人を再び月に送ることを目指すと表明し、また、その前年には、バラク・オバマ前大統領が人類を2030年代までに火星に送ると語っていた。
企業が宇宙ビジネスに進出する理由は
オバマは、民間の参画がこうしたプロジェクトに不可欠なものだと考えていることを明かしている。だが、現在本当にその計画を進めているのは、企業、とりわけマスク、かも知れない。
この希代の起業家は、米政府とほかの宇宙開発未着手の国の政府に対し、彼の宇宙飛行プロジェクトへの資金援助を求める可能性がある、と明言していた。つまり、以前からそうなると予想されていたが、各国の納税者は今後、運転席に座るというより、ロケット開発などのサポート役の立場になる可能性が高いわけだ。
もちろん、必ずしもそうなるとは限らない。民間宇宙企業への「投資」は何も新しい話ではない。特に、リチャード・ブランソンのヴァージン・ギャラクティックは、何年もの間、自社の再利用可能な宇宙旅客機を売り込んでいた。しかし、注目を浴びた一連の大惨事によって、フライトがこの先実現するのかどうか、疑問が生じている。
月面着陸のような政府が支援するプロジェクトは、本質的には政治的意思を問う試金石であり、必要な政府資金を使用するためものである。一方、民間企業は別の目標を持っている。最終的には、彼らは生き残るために利益を出す必要があるのだ。
実現可能で利益の出る事業はどんなものなのか、まだ明らかではない。すでに利益を生んでいるものには、データ収集用人工衛星の軌道投入がある。だが、宇宙の奥深くへの進出 (しかも宇宙飛行士を連れて)というのは、まったく別の話だ。投資利益率はせいぜい投機的レベルだろう。