手ぶらで入廷?オッサン弁護士の堕落 埋められないベテランと若手の溝(上)

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悪徳不動産屋に呼び捨てにされる弁護士

この年の秋、筆者はDという弁護士にも出会っている。D弁護士は、絵に描いたような悪徳不動産会社E社の代理人。B社がE社に融資をしたのはバブルが膨らみかけの時期。当時はかなりずさんな融資をしていたこともあり、金利は融資を実行した翌月以降、6年間にわたって、ただの1度も支払われていないというありさまだった。

担保物件を競売したら、国税の滞納分に優先権があることが判明して、1円も回収できないまま、貸したおカネ全額と未収の金利が無担保残債となっているという状態で、筆者が回収担当になった。

E社のF社長は当時、1カ月の賃料が150万円の超豪華マンションに若い愛人と住んでおり、地下の駐車場にはふだんF社長が乗り回しているフェラーリが駐まっていたのだが、これも愛人名義になっていて差し押さえはできなかった。

ちなみにF社長はこのマンションの賃料も払っておらず、愛人は愛人でかんだガムをエレベータ内の壁にべったり貼り付けるクセのある女性だったので、管理人が激怒していた。

そのE社にB社が債権者として破産申し立てをした際、F社長と連れ立って裁判所にやってきたのがD弁護士。ただひたすら時間稼ぎをするためだけに出頭したことがありありとわかるうえ、F社長に呼び捨てにされた挙げ句に、怒鳴りつけられている状態だった。なんでもF社長に借金の肩代わりをしてもらったから、頭が上がらないという話だったと記憶している。弁護士は破産するとバッチを失うので、F社長がD弁護士の弁護士としての地位を利用する目的で、借金の肩代わりをしてやったのだろう。

懲戒4回目でも登録抹消にはならず

あれから22年。この2人の動静については、その後も思い出すたびに日弁連の弁護士検索や、官報に掲載される弁護士の懲戒情報を蓄積、データベース化している個人運営サイト「弁護士懲戒処分検索センター」でチェックしているのだが、今回、チェックをかけてみたら、2人ともいまだに弁護士登録を抹消されることなく、弁護士を続けている。

懲戒歴では、A弁護士は業務停止8カ月の処分を受けており、処分理由は「事件放置」「業務報告なし」「紛議調停協力せず」。懲戒処分は、まず日弁連発行の会員誌『自由と正義』に掲載され、多少のタイムラグがあって官報にも掲載される。

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