なぜ「台湾」での東京五輪出場にこだわるのか 古くて新しい呼称問題に日台有志が動き出す

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2000年に民主進歩党(民進党)の陳水扁政権となって以降、「台湾」が「台湾」として存在できる空間を広げる運動はいくつか繰り広げられた。たとえば、「台湾」名義で国連に単独加盟する運動が代表例だ。当時の陳総統は「チャイニーズタイペイとは、奇妙な名称だ」と述べ、五輪や国際機関への参加に関し「不公平な待遇」と不満を述べたこともある。それが台湾正名運動へとつながっているのだ。

だが、陳水扁政権を引き継いだ中国国民党の馬英九政権は、「チャイニーズタイペイは国際社会で台湾が受け入れられる現実的で適切な名称」とし、台湾への改称に力を入れることはなかった。現在の蔡英文政権(民進党)は、台湾アイデンティティに理解を示しながらも、台湾への改称に表立った動きを見せてはいない。

親密度の高まりが台湾の呼称を考える契機に

何朝棟氏などこの運動に参加している人たちは、日台双方の街頭で署名活動などを行っている。日本は2011年の東日本大震災で台湾から多額の義援金を送られたことを契機に、台湾への関心と親密度が一気に高まった。現在、日台間を多くの観光客が行き来し、日本人は台湾に、台湾人は日本に対する好感度がますます高まっている。その中で「チャイニーズタイペイ」という呼称に違和感を抱く日本人も少なくはないと思われる。

東京五輪に「台湾」として出場することはかなうのか。マイクを握るのは「台湾正名運動」をリードする何朝棟氏(記者撮影)

高く厚い中国の壁はある。「チャイニーズタイペイ」という呼称が、台湾の有能なアスリートが活躍できる場を提供しているという現実的側面も無視できない。だが、中台の違いを理解する日本人が、「チャイニーズタイペイを掲げている選手は台湾人なのだ」と考え、より多くの声を上げることも大切なのではないだろうか。次の五輪のホスト国を務める日本にとって、真摯に向き合うことが求められている。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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