「いま考えると、彼のどこが好きだったのかを覚えていません。お酒が飲める人だったから、かな? あの頃はとにかく焦っていました。一緒にいて変な感じがしない人ならば誰でもOK、結婚してくれる人ととりあえず結婚したい!と思っていたんです」
しかし、その男性との相性は良くなかった。成婚退会をする話までしていたのに、ちょっとした言い争いをした翌日に携帯電話を着信拒否されてしまう。あまりに冷たく子どもっぽい別れ方に明美さんはショックを受けた。
「その頃、気分転換も兼ねてフランスのメドックマラソンに出場しました。給水所でワインを飲みながらフルマラソンをするという無茶な大会です(笑)。そこで出会った日本人仲間は面白い人ばかりで、婚活で知り合う男性が色あせて見えてしまいました。そして、自分自身もつまらない人間になってしまっていると気づいたんです」
明美さんは結婚を急ぐあまりに「お見合い相手に話を合わせることで気に入ってもらう」ことに重きを置きすぎていた。たとえば、旅行経験のない男性の前では、海外旅行が好きなことも言えなかった。このままでは自分らしくいられなくなってしまう。
結婚相談所を退会したのが38歳の秋。すると、週末が暇になった。大家都合で引っ越しをするついでもあって部屋の片づけをした。掃除をすると頭の中もすっきりするのかもしれない。明美さんは「自分は何がしたいのか。どんな人が好きなのか」を改めて考えることができた。
「精神的に崩れそうになったときに頼りになる男性がほしい、結婚するかどうかは別として恋人は必要だ、と思いました。そして、やっぱり私は自由に生き生きと稼いでいる人が好きなんです。『やらされ感』で働いているような人には魅力を感じません」
会った瞬間に「この人は面白い!」
その頃に参加した飲み会で、Repreという小規模の結婚相談所を知った。入会時にはカウンセリングを丁寧にするけれど、入会金や月会費はかからないというユニークな結婚相談所だ。
「私は正社員ですけど一般職です。決して高給取りではありません。東京で一人暮らしを続けるのはけっこう大変ですよ。でも、年に1回ぐらいは海外旅行に行きたい。それを削ってまで婚活したくないと思いました。Repreは登録しておくだけなら無料という点が良かったです」
譲れない条件も明確だった。自由な仕事人が好きだという点だ。その話を担当者に伝えたところ、何人かの男性会員と引き合わせてくれた。そして、4人目に紹介されたのが現在の夫である良明さん(仮名、47歳)だ。7年前に脱サラをして、かつては副業だったマンション経営に力を入れつつ、知り合いから引き継いだ飲食店も切り盛りしている。
「以前はハチミツを売っていたこともあるそうです。稼ぐことが大好きだけど自分のおカネには無頓着という変わった人です。ポケットの中にゴミと一緒にお札が入っていたり……。すごく太っていて、見た目はダメダメですけど、ニコニコしていて愛嬌はあります。会った瞬間に『この人は面白い!』と思いました。彼と一緒に退会するときは、もちろん成婚料をちゃんと払いましたよ。成果が出たのだから笑顔でおカネを出せました」
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