少し安くなった日本株を今買ってもいいのか 高すぎる米国株はもう一段下落の懸念がある
では、なぜそうした不確かな材料で米ドル安と円高が進んだかと言えば、対米ドルで円買いを行いたい向きが多く、そうした筋は嘘でも間違いでも何でもいいから、「円買いの材料を欲していた」、といったところが実態だったのだろう。
「円売り」をしていた投資家が、円を買い出した
そうした円を買いたい投資家とは、先物市場において、円売りを積み上げた投資家だったと推察する。
シカゴ先物市場における、非商業筋のポジションを見てみよう。先物残高の統計には、まず商業筋があり、金融機関を指す。金融機関は、為替相場見通しと関係なく、顧客から持ち込まれた外貨売買のポジションをヘッジするため、機械的に先物を売買する。
非商業筋は、相場観から先物を売買していると推察される投資家だ。この非商業筋の、円先物(対米ドル)の売り残高から買い残高を引いたポジションは、昨年11月14日(火)(先物残高の統計は、毎週火曜日時点)に、13.6万枚(1枚は1250万円)の売り越しでピークを付けている。
その後は、反対売買による円の買い戻しが進んで(結果として円高気味の推移となって)売り越し残は同11月28日(火)には11.1万枚に減っていたが、その後再度円売りが積み上がって(このため円安気味の推移となって)売り越し残は2018年の1月9日(火)に12.6万枚に増えていた。こうして再度積み上がった先物の円売りを買い戻して実現益を出したい投資家が多かったところ、絶好のタイミングで円買いの「口実」が現れた、ということだったのだろう。
したがって、なぜ一時108円に迫った米ドル円相場が、110円超えまで戻したかと言えば、先物市場における円の買い戻しが、「一旦は」一巡したと推察される。「円高第二幕」はこれから一段の米株安で訪れると懸念しているが、その前の小休止、ということなのだろう。
だが、こうした1月9日(火)からの円高にも関わらず、日経平均株価は1月23日(火)に2万4000円を超えるなど、しばらく堅調に推移していた。この背景には、その期間米国株が上昇していたという点もあるが、日本の輸出企業の収益実態が好調だという面も挙げられる。経済統計でみても、日本からの輸出の前年比は、金額ベースでも数量ベースでも、増加基調だ。その原動力は為替ではなく、世界景気の回復に伴う、日本製品への海外需要の増加だ。これが、輸出企業の株価の円高抵抗力となって表れていたと言えよう。
しかし、1月24日(水)以降、米ドル円相場が110円の大台を踏み抜いてさらなる円高に向かうと、さすがに輸出株を買いづらい状況となってきた。そこで物色が内需に回ればよいが、内需の実態をみると、正社員給与の伸び悩みなどから、消費者心理の改善ははかばかしくない。個人消費などは回復しているが、ペースが今一つだ。そのため、外需株からの物色のシフトを、内需株が受け止めきれず、結果として物色が手詰まり感を強め、日経平均を押し下げる形で働き始めたと言える。
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