少し安くなった日本株を今買ってもいいのか 高すぎる米国株はもう一段下落の懸念がある
ここで米国の政策に眼を転じると、ドナルド・トランプ政権は鉄鋼や鉱業、自動車といった産業の労働者に支えられて成立したため、中国からの安値輸出やメキシコからの移民が米国人の雇用を奪ってきた元凶だと主張し、通商面では保護主義の様相を強めていた。
保護主義により米国が貿易赤字縮小を目指す、という方向性であれば、米ドル安を政権が望んでいる、といった観測も広がりやすい。そうした地合いのなかで、スティーブン・ムニューシン米財務長官が、1月24日(水)に「米ドル安は米国の貿易にとって良いこと」という発言を行ない、市場に爆弾を投げ込む形となった。
そうした市場の反応を懸念した進言があったためか、その直後にトランプ大統領は「高い米ドルを望む」と語った。また保護主義的な政策そのものに対して、自由貿易を標榜する議会共和党主流派や、グローバル化のメリットを享受してきた米企業の経営者たちから、懸念が寄せられていたことに配慮したためか、大統領はTPP交渉への復帰の可能性を示唆した。
ただ、そもそもトランプ政権の基盤が工場労働者の雇用を守る、という点にあるため、大統領の保護主義を修正するかのような発言は、市場では今一つ信じられていないようだ。
続いての「主役」は、米長期金利の上昇
続いて世界市場に波乱を引き起こしたのは、米長期金利の上昇だった。米10年国債利回りは、昨年秋から昨年末は、概ね2.4%前後で推移し、動意に乏しかった。それが今年に入って、エネルギー価格の上昇に呼応する形で、じわじわと2.6%台に強含んでいたが、1月29日(月)の昼(米国にとっては時間外取引)から上昇を速め、先週末は一時わずかながら2.85%を上回る局面もあった。過去の低金利による運用難で、債券市場から株式市場に流入していた資金が、長期金利が高まったため、株式から債券に戻るだろうとの観測が生じ、米国株式指数が下振れする展開となったわけだ。
こうした金利上昇加速の背景には、1月28日(日)の、オランダ中央銀行クラース・クノット総裁(ECB=欧州中央銀行の理事会メンバーでもある)の発言が材料になったと言われる。総裁は、ECBが9月まで予定している債券買い入れの後、10月以降は、買い入れを止めるべきだと語ったため、欧州での長期金利が上昇し、それが米国金利を押し上げた、との解説だ。
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