例えば、最近では「イノベーション人材」というキーワードが、採用現場でよく聞かれます。私が過去に担当した、有名食品メーカーのB社、大手化学メーカーのC社でもイノベーションをキーワードに採用したいという話がありました。そこで、どんな社員がイノベーション人材と考えられるか、実際の活躍社員に関する事実情報をもとに、当社の測定技術を活用して定義するお手伝いをしました。すると、B社では「発想力」「挑戦する力」が重視される一方、C社では「アクションの速さ」がより重視されるという全く異なる結果が出ました。
これは、B社ではゼロから全く新しいものを生み出すことが求められ、C社では顧客との対話からさらに新しいものを生み出すことが求められているからです。このように、企業の事業内容や強みによって、同じイノベーション人材でも、求められる特性は異なるのです。
一方、中堅・中小企業の場合は、「直接会う人を決める」という目的で適性検査を活用しているケースはまれです。採用人数も少なく、一人の影響力をより大きく捉える中小企業は、「応募者一人ひとりをより深く理解すること」を目的として実施しています。
大手企業も、「会う人を決める」だけの用途で適性検査を実施しているわけではありません。「応募者への情報提供」、「最適な配属を決める」といった場面でも、適性検査が活用されているのです。通信・放送大手のD社では、適性検査の結果に加えて、個人が大事にしている価値観や、志向をとらえる検査を行い、2つの検査結果を組み合わせて配属に生かしています。
適性検査の準備は、テスト対策とは異なる
例えば、「新しいこと」に対して、「やりたい」と「得意」は異なります。「やりたい思い」は強いけれど「得意ではない」という人もいるわけです。そのような人に対して、「やりたい思い」を重視し、新しいことに取り組む部署への配属を行うと、うまく仕事に入っていけず、心身ともに疲弊してしまうことも起こりえます。そうならないために、内定者一人ひとりの志向や価値観を理解しながらも、適性検査で測定した資質・能力と合わせて多面的にその人の個性を見た上で、個性に沿った配属、また組織の受け入れ態勢を整えることに取り組んでいます。
医療品メーカーのE社では、適性検査の結果から応募者をタイプ分けし、タイプ別に自社をどのようにとらえているのか、どんなところに魅力を感じているのかを把握しています。その上で、それぞれの興味・関心にあった情報や、不安を払拭する情報を取捨選択して学生個人の専用ページ(マイページ)やメール、説明会などで伝えています。
このように、企業は「応募者一人ひとりの個性を捉えて存分に生かしたい」という考えで適性検査を行うケースが増えています。
限られた時間の面接だけでは十分に応募者のことを理解できるとは言えません。ですから、皆さんも適性検査を受けるときは、自身の個性や能力を素直に伝えられるよう回答してもらいたいと思っています。性格検査を通して素の自分を伝えることが、自身の個性を生かして活躍できる会社に出会うことにつながります。能力検査でもそれは同様です。「自分の力をあるがままに発揮している状態」と、「背伸びをしたために、本来の自分とはかけ離れた姿を周りが期待している状態」を比較してみてください。自ずと取り組み方が見えてくるのではないでしょうか。
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