580億円消失、コインチェックの「問題姿勢」 不正アクセスの裏に透ける成長優先主義
主力事業を転換した後の成長は目覚ましかったが、その戦略には勇み足を指摘する声は少なくなかった。
問題視されているのは、当局による認可の長期化だ。金融庁は2017年4月の改正資金決済法施行を受けて、同9月に仮想通貨交換業者の登録一覧を発表した。第一陣では11社の登録が明らかになり、現時点で16社が登録済みになっている。
16社はいわゆる国のお墨付きをもらっている形だが、業界2強であるはずのコインチェックはいまだここに含まれてない。現在はあくまで「みなし業者」という位置付けだ。
こうした状況について、「顧客の資産を管理する体制が不十分なのではないか」「(成長を追い求めて)取り扱い通貨を増やしすぎたので、マネーロンダリングなどに悪用されている可能性を当局が懸念している」と語る取引所関係者もいた。しかし、1月上旬時点で大塚氏は、「金融庁からの認可は間近だと考えている。手順はもう98%終えている」と語っていた。
目立った外部株主への「配慮」
今回明らかになったのは、派手な広告宣伝で顧客獲得を急ぐ一方、コインチェックが肝心のセキュリティ対策をおざなりにしていたという点だ。顧客の仮想通貨を管理するための秘密鍵は盗難を避けるために、基本的にインターネットと切り離しておくことが望ましいが、それが不十分だった。
また、ある人からある人に送金する際に複数の署名を必要とするマルチ・シグニチャというという仕組みも、ビットコインには適用していたがNEMには導入していなかった。
会見の中で和田氏、大塚氏は共に今後の対応や具体的な資産規模、財務状況などについて明言を避け、「株主と相談して今後の対応を決めたい」と繰り返した。和田氏と大塚氏で株の過半を持っているが、外部株主(インキュベイトファンド、ANRI、WiL)に対する過剰なまでの配慮が目立った。インキュベイトファンドでゼネラルパートナーを務める和田圭祐氏は、コインチェックで取締役も務めている。WiLが運営するファンドには、産業革新機構や大和証券、みずほ銀行、全日本空輸、ソニー、日産自動車など日本の大手企業も数多く出資している。
大塚氏は、東洋経済の取材に対し「昨年までは(ビットフライヤーに次いで)ナンバー2だったが、今はナンバー1の会社として、王者として、議員やメディアとの定期的な勉強会などを通じ、業界を健全に発展させていく責務がある」とも語っていた。
そんな中で起きた大規模トラブル。ある取引所幹部は「これから世界的に規制強化の動きに拍車がかかり、金融庁の監督、審査は確実に厳しくなるだろう」と漏らす。日本が主導するはずだった仮想通貨市場の発展に向けて、今回の一件が暗い影を落とすことは間違いない。
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