「ペッパーの父」は誰なのか?親権問題の深層 ベンチャー気質が売りのソフトバンクが変貌
通達から一夜明けた24日、(林氏が代表を務める)GROOVE Xはリリースで、ソフトバンクロボティクスの指摘通り、今後は林氏について「開発リーダー」という経歴を外した表現に統一すると発表。
林氏も自身のフェイスブックやツイッターで、「ペッパーの父」「生みの親」などと自己紹介したことはないこと、今後そのような主張をするつもりもないことなどを投稿で説明している。ソフトバンクとは対照的に、極めて冷静な対応だったといえそうだ。
開発者の流出が騒動の背景?
それでも残る謎は、なぜ今のタイミングで通達が出されたのかだ。ソフトバンク側は「GROOVE Xに何度も申し入れてきたのに改まらないため」とする。だが、この謎については別の見方もある。ペッパーの開発スタッフをGROOVE Xが引き抜く動きがあったからというのがそれだ。
現在、GROOVE Xには約60人が在籍しているが、うち3人の元ソフトバンク社員(20代〜30代)が働いている。転職時期は不明だが、中には「ロボット開発に継続的に携わりたかったため」と転職理由を語る者もいる。一方のソフトバンクは「転職はちょくちょくあるが、転職者がどこに行ったかまでは把握していない」と言う。
さらに、昨年12月には会社の広告をソフトバンクにアピールするように汐留に張り出し、同時に68.5億円もの巨額の資金調達を大々的に発表した。このとき多くのメディアが「ペッパーの父」「生みの親」などと表現した記事を配信した。
これらの記事が、1年半以上前から「生みの親」や「父」という表現を取材記者に使わせないよう、林氏サイドに伝えてきたソフトバンク側を大いに刺激することになったようだ。
GROOVE Xが開発中のロボットは、ペッパーのような人型ではなく、「人に癒し、やる気を与える」といったコンセプトを持つ。つまり、「人を楽しませる」のが得意なペッパーからは遠く離れた存在といえる。方向性がかなり違うのだが、今回の過剰とも取れる反応を見る限り、ソフトバンクは手強そうなライバルの出現を警戒しているのかもしれない。
そもそも、「ペッパーの父」などの表現はメディア側が考えたものである。それならば、父と書いたメディアに個別に説明し今後は使わないようにお願いすれば済む話だ。実際、過去には個別に要請してきた経緯もある。
ただ、「1年前に言われたのは、生みの親や父の表現についてだけ。開発リーダーについて言われたことはない。ソフトバンクのサイトにもあるくらいだから、開発リーダーは使っていいものだと思っていた」(GROOVE X関係者)。
今回、開発リーダーと書いたサイトは訂正しないまま報道各社に「使わないように」と要請する初歩的なミスを犯す結果となったが、これをソフトバンク広報の判断で行ったとは考えられない。上層部からよほど特別な強い指示があったのだろう。
元来、ソフトバンクはベンチャー気質が売りで、人員の新陳代謝も活発な会社だった。転職や独立して活躍するOB社員は多く、買収によって出戻りとなる社員もいる。そんな多様性が特徴の1つだった。だが、今回の過剰とも言える対応は、同社の変貌ぶりを表しているのかもしれない。
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