偉い人の都合優先のイベント進行
私は時々、ブランドや広告をテーマとした中国のシンポジウムやフォーラム(中国語では「論壇」)に呼ばれてお話をします。このような場でも、中国式の「偉い人最優先」の原則が貫かれています。
通常、初日の朝一番が最も重要な行事。まず初めに来賓のあいさつがあります。ここが主催者の力の見せ所で、政府高官のスケジュールを押さえ、出席して祝辞を述べてもらいます。たとえば、中央省庁の部長(日本の大臣に相当)、副部長(副大臣)、司長(局長)や市政府の高官などが招待されます。当該イベントの意義を強調し、また開催地の自治体への感謝と激励を込めた型どおりの祝辞が定番です。続いて主催者側のトップによるあいさつ。司会者にはCCTV(中央電視台)などの著名MCが起用され、メリハリを効かせた流暢な司会進行で華を添えます。
政府高官、来賓、主催者の挨拶が終わるとそこで一段落。ここで、お偉いさんたちの集合写真セッションが入ることもあります(中国では今でも大物と一緒に写した写真が自慢のタネとして大切にされます)。その後、シンポジウムやフォーラムの本論に入るわけですが、その頃には高官・来賓の皆さんは一斉に退席してしまっています。何しろ忙しい方々ですから、公務の傍ら広い中国で毎日のように繰り広げられるさまざまな催しに引っ張りだこなのでしょう。
私は、フォーラムに呼ばれてブランド戦略や広告について講演するたびに、ぜひとも中国の偉い方々にこそ自分の話を聞いてもらいたいと切に願うのですが、かないません。中国のイベントでは内容よりも格式とメンツが優先されるのだとしか思えません。
フォーラム本体の運営実施も独特です。ゲストスピーカーは数多く集めることが重要なようで、その分、1人当たりのスピーチ時間が15分程度と極端に短く、従って内容も中途半端なものになりがちです。講演スタイルもスピーカーによってまちまち。きちんとパワーポイントを用意してくる人もいれば、会社のPRビデオを流す人、ビジュアル一切なしに一人漫談よろしくとうとうとしゃべりまくる人など、バラバラです。
4~5人のプレゼンテーションが終わると、続いて40~50分のパネルディスカッションとなります。舞台上にはソファがセットされ、設定されたトピックに関してパネリストがディスカッションするのですが、中国人は、普段おとなしい人でも大勢の前で話すとなると、俄然、熱弁を振るうので、収拾がつかなくなることがよくあります。MCの手綱さばきが試されます。
このような「短い講演4~5本+パネルディスカッション」のセットが1日のイベントなら2~3回、2日間ならさらに多く繰り返されます。途中、昼食会やウェルカムパーティ、イベント当日の晩餐会では豪華な中華料理と白酒、紅酒(赤ワイン)が振る舞われます。フォーラムの進行とともに櫛の歯が抜けるように参加者が退席していき、最後には人のほとんど残っていない会場で主催者が謝辞を述べて終了となります。
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