アドテクの「ジーニー」が描く世界戦略の中身 工藤智昭社長にロングインタビュー

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工藤:そうです、それらにフォーカスですね。お客さんが喜ばない問題を一生懸命開発しては駄目だってことですね。すごく汎用的で、日本とアジアに売れて、5000社・1万社のパブリッシャーが喜ぶ、パブリッシャーの業務の中で最も大切な機能を作るということです。見極めが難しいんですが、3つ4つの話なので、属人的にやれてしまうんです。

手を広げるよりは重要な問題を解くのが大切

村上:なるほど。投資余力と配分の方針についてお聞きします。現在は自社で全ての開発を行っていますよね。競合がテクノロジーを一気に獲得するために買収という手段を活用していることを踏まえると、今後さらにスケールさせていくためには、現在の資本力で十分とお考えですか?

工藤:自社開発がいちばん大切なものなのでそこに全力投下していきます。手を広げるよりは重要な問題を解くのが重要で、クライアントが困っていて価値がある問題にセールスもテクノロジーもみんなの力を結集させることが肝要です。人数や資本力の問題ではないと思っています。

村上:やはり数個の重要な問題にフォーカスできるかが、とにかく重要だというお考えですね。

工藤:その数個の問題さえ解ければ、グロースできると思っています。

小林:その重要な問題は何か、というところはどうやって絞っていくんですか?

工藤:1週間に1回、僕とプロダクトマネジャー、取締役の廣瀬や技術のヘッドたちとプロダクトの会議やっているんですが、そこで議論をして、「多分これだろうな」というのをみんなで考えていますね。現状は、業界と顧客のことに詳しい人同士で話せば「ここを解決すればすごく伸びるな」ということが合意できるんです。次のステップは、その意思決定プロセスをどう属人化させないか。これについてはプロダクトマネージャーと話し合っているところですね。

小林:では、高頻度で課題をブラッシュアップしているということですか?

工藤:大方針は変わらないですが、各論がどんどん磨かれていく感じです。

「本当に価値のある問題3つをちゃんと成し遂げればビジネスのグロースは担保できる」と語る工藤社長(写真:Signifiant Style)

村上:アドテク業界は一時期大ブームで、その後、急激に落ち込むといった局面もありました。御社でも「うちの会社も危ないかな」というような時期はありましたか?

工藤:もちろん、年によって楽に伸びるときと、大変な時はあります。僕たちはずっと淡々とやっていました。以前から海外のアドテクの会社ともよく話をしていて、業界がどうなるか、手数料でも、この辺りで収斂するだろうというポイントを見定めてビジネスを設計していたので、周囲の会社ほど影響は受けませんでした。また問題が発生しても、すぐに対応しています。

村上:当時から海外市場や動向にアンテナを張っていたのが活かされているわけですね。また中長期を見定めて戦略立案されていたことも、アドテクのような急激な変化に直面する業界では大きなプラスだったと。

工藤:ピンチと言えるとすれば、4~5年前にシステムを全部入れ替えたときですね。当時、商品も良くてセールスも頑張っていたんですが、結果的にこれ以上パブリッシャーを獲得していくとアクセスに耐えられなくて落ちるという状況になってしまいました。その時に、根本の部分から技術を見直す決断をし、4ヶ月間開発を全部止めて、エンジニアがホテルに缶詰になって全部作りきったんです。

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