アドテクの「ジーニー」が描く世界戦略の中身 工藤智昭社長にロングインタビュー
村上:総入れ替えとは大きな決断ですね。そこでやり切れていなかったら、ここまでの成長につながってないのでは?
工藤:そうですね、大きな経営判断でしたが、やってよかったですね。
村上:システム総入れ替えは相当大きな手術、また経営的判断です。どうしてその判断ができたのでしょうか?
工藤:当時の経営会議に出ていたメンバーで話していて、エンジニアも、「大きな取引先を見つけてくると落ちるという状況が嫌なので、全部ゼロから直したい」と言っていたので決められましたね。あと、ちょうど海外の大手のアドテク企業が買収交渉に来たんです。彼らのヴァイス・プレジデントが、インフラをどうやってマネジメントしているかなど、いろんなことを喋ってくれたんですよ。
村上:彼らの技術自慢を聞かれたんですね。
工藤:そうですね。1個のサーバのCPUでRTBこれだけさばけるとか、どういう言語で書いていてこういうふうにやっているとか話してくれて。その場にエンジニアも同席していたので、これはうちでも作れるなって思ったんだと思いますね。それで基礎の技術開発をしてやり直したんです。
村上:海外にアンテナを張られていたこと、経営上の判断に普段からエンジニアを関与されていたこと、それらがあったからこそ重要な判断が下せたというわけですね。
工藤:そうですね。
村上:これだけ複数のプロダクトを管理されていれば、何か1つのプロダクト売上が急落したなんてことはなかったんでしょうか?
工藤:短期的に企業価値が毀損するような出来事はもちろんあります。ただそれらは技術でクリアできるので、そういう場合にはプロダクトもサービスや組織も緊急手術をして成長路線に戻します。
村上:これも大方針が決まっていればというお話ですね。技術力があれば乗り越えられると。
空白地帯の東南アジアから世界へ
村上:かなり早い段階で海外、具体的には東南アジアに進出されていますね。なぜあの段階で海外、しかも東南アジアを目指されたんですか?
工藤:実はもともと、日本でアドテクのビジネスをやりながらメールとスカイプだけで海外に営業していて、拠点を作ればすぐに黒字化できるだけの売上を持っていました。それをどう伸ばしていこうか、という議論の結果、海外に進出する決断になったのですが、シンガポールと同時にニューヨークにもチャレンジしていたんですよ。
村上:え、そうだったんですね。
工藤:アメリカは難しいと一瞬で気づいてやめました。同時に、東南アジアの方は空白地帯だということもすごく感じました。
村上:外部から見れば進出タイミングが早く見えているだけで、実はすごくリーンに売上を立ててみるということをやっていたんですね。更に「世界一を狙う」とも仰ってますが、それはどのような意図があってのことなんでしょうか?
工藤:ファースト・プライオリティは、東南アジアやこれから展開したいと考えているインドで勝ち抜くことに置いています。実際にセールスで色んな国に行って、パブリッシャーや顧客の声を聞いて、競合がどれくらい強いかを体感すると、インドは結構大変そうなんです。インドのローカルな企業はすごく優秀だし、世界的な企業からお金も集まってきているので、展開する際は本腰入れてやらないといけないなと思っています。
一方で、我々のプロダクトの競争力が上がってきているので、以前よりはアメリカでも通用するようになって来ているという手ごたえもあります。先々を見ればヨーロッパやアメリカでもやれるだろうとも思っているんです。