それでは2018年のテーマは何かと考えると、「日米欧の金融政策の正常化」と「世界経済の回復持続力」の2つとなろう。特に前者については2月にパウエル次期FRB議長が就任、4月に日本銀行の新体制発足(黒田総裁続投でも、正副総裁3人のうち2人は交替か)と近いタイミングで体制変更が行われる。長らく市場を見てきた筆者でも、ほぼ同時期に日米中銀の体制が変わることは初めての経験だ。誰がやっても金融政策の舵取りは大きく変わらないとの冷めた見方も多いが、何か起きるかわからない点では、今春は注意すべき時間帯と筆者は思う。
その一方で筆者は昨秋時点で、この先に世界経済の回復に死角があるとすれば、(1)出来すぎの米国3%成長持続からの減速(目先は1~3月期、好調なクリスマス商戦後)、(2)中国の債務増加(経済のソフトランディングではなく失速が懸念される時)と考えていた。
原油価格の急上昇を警戒
(1)ではまず、新FRB議長が就任するころ、発表される1月分データに鈍さが見えてくる可能性がある。その懸念を後押しするかのように、昨年末から米国東海岸では、2014年に匹敵する寒波が到来。米国経済に悪影響を与え始めている。テクニカル要因もあり、特にリーマンショック後は米国1~3月期のGDP成長率が弱めに出る傾向があり、2018年もその可能性が高まっていると言えよう。ただし天候要因にもかかわらず、適度な減速にとどまるものならば、米国利上げのシナリオを大きく崩すものとはならない。むしろ、昨秋以降の原油高持続の方が、物価見通しの引き上げに作用する可能性がある。
(2)の中国の見極めでは、目先は人民元動向を見守る必要がある。一部報道では、人民銀行が元高誘導を緩和したとされる。人民元の適度な安定が、中国経済のソフトランディングシナリオを支える。また1月22日発表予定のIMF(国際通貨基金)世界経済見通しでは、2018~2019年の中国の姿にも注目したい。
最後に、2018年になって筆者が気になるのは、原油とユーロの動きだ。
ヘッジファンドの一部が、コモディティ投資(原油にとどまらず、世界経済の体温計となる非鉄金属まで)のウェイトを引き上げ始めている。その根拠は、景気後退に近づく回復局面後期に商品相場が大きく上昇するというもの。2007年から2008年夏にかけての原油相場の急上昇を彷彿させる動きとなりかねない。筆者は、WTIベースで1バレル=40~60ドル程度が居心地のよい水準とみていたが、投機資金の流れが加速すれば、70ドル超えも十分にあり得る。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら