まじめな人ほど問題をこじらせてしまう理由 ギャンブル狂の息子を止めた親の意外な秘策
結局、この指示は守られませんでした。親子とも家族療法家の指示には疑問と反発を感じていたが、より強く抵抗を示していた息子のほうが先に音を上げたのです。
「こんなこと、やってられない」。親はもはや自分の悪行を引き止める役割を果たさず、それどころか、ギャンブルを教わるというのだから、もはやギャンブルを続ける意味はありません。
根本原因の削除は必要ない
なぜギャンブル狂の息子とその家族の悪循環は変化し、別の循環がつくられたのでしょうか?
その謎を解くキーワードが「ダブルバインド」です。
ダブルバインドは、従うことも、従わないこともできないような命令です。
たとえば「自発的に勉強しろ」という指示は、それに従って勉強すれば「自発的に」という部分に反し、かといって逆らって勉強しなければ当然「勉強しろ」という部分に反してしまう。
精神科医ミルトン・エリクソンは、同様のねじれて従うことも、従わないこともできないような命令を、治療目的に用いました。
たとえば、手の震えを止めたい人に「自発的に症状を出してください」といった指示の形を取るのです。
もし指示に従い手を震わせることができれば、それは「自発的に」という部分に反します。もし手を震わせることができなければ、この場合も「症状を出せ」という部分に反します。
いずれにせよ従うことができないのは、単なるダブルバインドと同じですが、その指示に従えないことが、指示された者にとって望ましい結果となる点が異なります。
「症状を出せ」という指示に従えない場合、問題の症状はなくなっていることになります。
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