航空業界の将来を左右する新素材「SiC繊維」 日本カーボンと宇部興産しか作れない

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しかし、飛行機のエンジン部分は飛行中に1300度を超えるため炭素繊維は使用できず、ニッケル合金が使用されている。このニッケル合金の代替として期待されている素材がSiC繊維だ。

耐熱温度は1800~2000度

SiC繊維はエンジンの高温エリアで使用されている(図表提供:宇部興産)

SiC繊維はニッケル合金と比べて重さが3分の1で強度は2倍、耐熱温度が1800~2000度と高い。ニッケル合金を使用したエンジンは外から取り込んだ空気で冷やさなくてはならないが、SiC繊維を使用したエンジンは空冷の必要がない。そこで、取り込んだ空気を推進力として活用できる。

航空機エンジン大手の米国ゼネラル・エレクトリック(GE)と仏サフラン・グループが共同開発したエンジン「LEAP」の高圧タービンには日本カーボンが製造したSiC繊維「ニカロン」が使用されている。エアバス「A320neo」やボーイングの「737MAX」はLEAPを搭載している。

GEはSiC繊維を最新型航空機エンジン「GE9X」にも採用した。GE9Xは現行モデルのGE90に比べて燃費が10%高い。GE9Xはボーイングの次世代旅客機「777X」に搭載される予定だ。

日本カーボンは2012年にGE、サフランと合弁会社NGSアドバンストファイバーを設立(筆頭株主は日本カーボン)、富山工場で年間10トンのSiC繊維を生産している。また、GEが米国アラバマ州で2019年4月から稼働させるSiC繊維工場に日本カーボンが製造ライセンスを供与するほか、稼働後にはサフラン社とともに資本参加する方針だ。アラバマ工場の生産能力も年間10トン。

宇部興産は1980年代半ばからSiC繊維の開発に取り組んでおり、製品名は「チラノ繊維」。ガスバーナーの下に敷いて熱を遮るバーナーマットやディーゼルエンジンの排ガス中の粒子状物質を捕集するフィルターに採用されている。また、F1自動車のマフラーやターボチャージャー部分、ゴルフクラブ、テニスラケット、スキー板に使用されるなど、民生用での実績は多い。

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