NECが赤字の「債務超過会社」を買収するワケ 「海外セキュリティ拡大」の起爆剤となるか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

だからと言って、NECがNPSの再建を成功させる保証はどこにもない。会見では「2008年に3億ドル(約320億円)で買収した通信事業者向けシステム構築会社、米ネットクラッカー・テクノロジーでは、当初は現地に任せていたが、しばらくして日本のやり方を押し付けた結果、うまくいかなかった。今回もそうなるのではないか」と心配する声も聞かれた。

NECの新野隆社長は「現地のCEOとCFOにはそのまま残ってもらうつもりだ。事業に強い、キーになるメンバーを日本から送り込む」と述べるにとどまった。

今後も買収を継続しそうだが・・・

新野隆社長は海外セキュリティ関連の買収を繰り返すことを示唆した(撮影:今井康一)

新野社長は「今回は第1弾」と今後も海外セキュリティ関連で買収を繰り返す意思を強くにじませた。会見で配布した資料には第5弾まで想定しているかのような図を掲載している。

好採算企業へと舵を切りたいが、国内のSI(システム・インテグレーター)事業は依然として顧客要望に合わせるカスタマイズ型のシステム構築が多く、低採算体質を変えることは容易ではなさそうだ。勢い、海外に活路を見出すしかないが、海外に強い足掛かりがない。

今回買収したNPSに、来期以降は収益の改善が期待できるとはいえ、売上高250億円では、国内主体で1000億円規模のセキュリティ事業の採算性を引き上げるほどにはなりようもない。新野社長はそれを承知の上で「第1弾」と強調したのだが、果たしてほかに良い買収先が海外にごろごろ転がっているのだろうか。

M&A戦略に大きく舵を切ったかのようにみえる今回の買収劇。海外セキュリティ事業拡大に向けた起爆剤となる可能性がある一方で、第2弾、第3弾、第4弾……と次々にまとめていけないと、「赤字続きの債務超過会社を700億円もかけて買収するとは」と株式市場に奇異に受け止められるだけかもしれない。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事