NECが赤字の「債務超過会社」を買収するワケ 「海外セキュリティ拡大」の起爆剤となるか

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最終損益も4120万ポンド(約61億円)の赤字だった。赤字の原因は借入金が多く、支払金利の負担が重かったことによるもの(前期は2400万ポンド、約36億円の最終赤字)。

借入金が多いのは、現在の大株主である投資ファンドのCinven(シンベン)がLBO(レバレッジドバイアウト、借入金による企業買収)でNPSを2014年に買収したことに起因する。LBOの常套手段として、シンベンが借り入れた負債を買収後にNPSに負わせたためだと山品氏は解説する。

投資ファンドに翻弄された歴史

NECの山品正勝執行役員は「買収資金で債務超過から脱する見込み」と強調した(撮影:今井康一)

最終赤字が続いたために2017年4月期は9700万ポンド(145億円)の債務超過だった(2016年4月期は5290万ポンド、約79億円の債務超過)。だが、「今回の買収により、NECの買収資金で債務が劇的に減少。債務超過から脱する見込みだ」と山品氏は会見で胸を張った。

「LBOの影響による金利支払い額は4010万ポンド。この金利の支払いがなくなるだけで最終赤字はゼロ近辺まで回復する。数百万ポンドの構造改革費用がなくなることで営業黒字化や最終黒字化が見込める」(NEC幹部)

はたして債務超過続きの赤字会社であるNPSに713億円も払う価値があるのか。会見に参加したアナリストはその点を見極めるためにいくつもの質問をしたが、会社側の回答に満足した様子のアナリストは皆無だった。

NPSの歴史は、投資ファンドに翻弄された歴史といえる。シンベン以前の筆頭株主も投資ファンドで、前筆頭株主のKKRはBPOサービスを拡大するなどして企業価値の増大を図った。だが、BPOサービスはコスト削減圧力が強く低採算。NPSの収益構造を悪化させる結果となった。

次に現れたシンベンは不採算事業の縮小など収益構造の改善を目指した。一方で、LBOを用いた結果としてNPSの財務を悪化させる副作用を起こした。今回のNECの買収は、投資ファンドの経営再建が2度も破綻をきたしたために、事業会社にお鉢が回ってきたと見ることができる。

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