「オプジーボ」が厚労省から標的にされるワケ 1年前の大幅値下げでは終わらない

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このルールを極めて単純化して説明すれば、急拡大し大きな販売額に達した薬は、当初の価格設定時より儲かっているから値段を下げてもいいだろうという理屈。だが、この値下げは異例尽くしだった。

まず次の薬価見直しのタイミングは2018年4月に予定されていたが、それを待たずに値下げされたこと。もう1つは半額に引き下げられた根拠だ。半額への引き下げには、薬価ベースで年度販売額が1500億円以上になることが必要だが、値下げが決まった時点でオプジーボは販売額1500億円まで届くかは不透明な情勢だった。

もともとの値段が高すぎた

それでも最終的に値下げで決着したのは、もともとの値段が高すぎたという事実がある。

国は薬価を決める際に、同じ種類の病気に同じ働きをする類似薬がある場合はそれを参考にする。だが、オプジーボの場合はまったく新しい働きをする画期的な新薬であるがゆえに、2014年7月の初承認時点では類似薬は世界中どこを探してもなかった。

そこでオプジーボは原価計算方式という別の方式によって薬価が決められた。この方式では、開発期間が長く、メラノーマという対象患者数が限られていた疾患で適用されたオプジーボの価格は高くならざるをえなかった。ただ、この価格決定の過程は外からは見えず、「明らかに厚労省の相場観がなさすぎた」という批判も関係者から出ている。

そしてオプジーボは、今回の薬価改定でも値下げの対象となりそうだ。今回の理屈は、「用法用量変化再算定」という別の引き下げルールだ。

このルールでは、厚労省の承認する用法用量の変化に伴い薬の量が増えても、1日当たりの薬価が同額になるように調整する。たとえば患者に出す量が1日1錠から1日2錠になれば1錠当たりの価格は半分になる。

厚労省は2018年度から同ルールを見直し、効能追加(適応拡大)によって用量が拡大した場合もルールの対象にする方針だ。オプジーボは上市後、非小細胞肺がん(2次治療での利用)、腎細胞がん、胃がん(3次治療での利用)など順調に適応を拡大しているため、新ルールの適用は確実といわれる。

このルールに従うと、オプジーボの場合、半額引き下げ前をベースに約56%の価格引き下げになる。つまり、元の価格(100ミリグラムで約73万円)を100とすると、44(同約32万円)となる。現在の約36.5万円と比べると、約12%の値下げということになる。

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