偏差値ばかり愛する「教育後進国」の淡い末路 海外の先進国にフィンランドの事例も
増田:フィンランドの話で、いじめについてどう対処するかを思い出しました。何か起こったら、みんなが居心地がいいとはどういうことかを、あらゆる面から考えるということなんです。そうやって考えることで、いじめをなくす方向に持っていく。
もちろんフィンランドにもいじめがあって、問題になります。でも、そういう発想の仕方というか、根本的なところでの考え方で対処していく。私にとって居心地がいいだけでいいのか。みんなにとって居心地がいい状態とはどんな環境なのかと、みんなで考えていく。日本ではなかなかそういうふうにはならなくて、道徳を教科化して、いじめにも対応するなんていうことになっていきます。
池上:日本は、現場に任せたり、現場の先生の報告を聞いて、これからを考えていくといった仕組みになっていません。大概が上から決まっていきます。流行に飛びついて、例えばこれからはAIだと言われれば、プログラミングをはじめコンピュータについての授業を増やしましょう。英語がもっと必要だと言われれば、小さい頃から英語教育を始めましょうと。それで何がたいせつなのか、何を軸に据えなくてはいけないのかが曖昧になって、わけがわからなくなっていってしまう。
学力テストでわかる世界の規準、日本の規準
池上:日本もまずは文科省を解体して、中央教育委員会をつくればいいのではないでしょうか。今は文科省が学習指導要領づくりをやっています。けれど、文科省の役人の中には教育学部出身者なんてあまりいません。
教育のことをたいして知らない役人たちより、現場の先生の状況や学力テストの結果をきちんと読み解き、子どもたちの学力のどこが強くて、どこが弱いのかを見極め、次のカリキュラムを考えていけるような専門家を集めて、政治に左右されない学習指導要領をつくる組織を新設すればいいと考えてしまいます。
増田:全国学力テストが2007年に復活したのも政治主導でしたよね。
池上:OECD(経済開発協力機構)が国際的に学習到達度を調査しているPISA(Programme for International Student Assessment)の日本の順位が下がったことが要因になって、小泉純一郎内閣のとき、当時の文科大臣の中山成彬が提案しました。
増田:PISAは2000年から3年ごとに実施されていて、日本の順位が初回より2回目に下がったことが話題になり、国内の学力低下が取り沙汰されるようになったんですよね。そして中止されていた全国学力テストが再開されることになった。