偏差値ばかり愛する「教育後進国」の淡い末路

海外の先進国にフィンランドの事例も

池上:PISAの順位が下がったのだけれど、実態をよく見ると、参加国が増えたことによって、日本の順位が下がったのだけれど、絶対的な成績は日本が下がっていたわけではなかったんです。しかし国内で学力低下だと言われ出したときに、昔に比べて学力が低下しているかどうかというデータがなかった。だから学力テストを始めようといって始まったんです。

増田:ただ、日本の全国学力テストは、悉皆調査、つまり全員参加なんですよね。それも何度もやっていると試験対策をした上での調査になってしまいますから、学力を継続的に調査するには、意味がないんです。

日本の学力テストには意味がない

池上:PISAというのは、統計学的に選んだ一握りの集団だけに試験をして、試験が終わったあと、問題を回収してしまいます。だから毎年、同じ問題を出せるわけですよ。全員に同じテストをしてしまったら、テストの内容が漏れるし、試験対策が次の年からできてしまいます。

毎年、同じ問題をランダムに一定数の子どもたちで調査しているからこそ、その結果を見て、学力が上がっているのか、下がっているのかが比較できるのに、毎年違った問題が出題される悉皆調査の日本の学力テストにはあまり意味がありません。

増田:全国学力テストが再開された2007年は、小学6年生と中学3年生が全員参加でした。それが2010年には約3割の抽出方法になったんです。その後、希望する学校も参加できるようになって、また2013年から悉皆調査に戻りました。保護者から、うちの子がテストを受けていないのはずるいという声が多くなったから、全員参加になったと言われています。

池上:私が小中学生のときにも全国学力テストがありました。このときも都道府県別の競争が過剰になってしまって、あまりにそれがひどいということでやめたんです。テストの日に成績の悪い子どもを自宅待機させたりしていた。今も同じようなことが起こっているのでしょう。

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増田:外国人の子どもなどを参加させない学校もあるようです。日本でも最近は外国人の子たちが増えていますからね。けれど日本は、例えばヨーロッパの国のようにいろいろな国の子がいて言葉ができない、今日入ってきた子がいるなんてことが日常茶飯事でたいへんな状況ではないわけです。

そういう環境の国と比べれば、日本でテストをしたら学力は高いと思います。だから移民が多い国、例えばフランスやイギリス、アメリカのPISAの順位と比べて日本はどういう位置にいるのか、そういう視点も必要なのではないでしょうか。

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